《広角レンズ》多様化する大学入試 学生、多面的に評価 茨城大、一部日程前倒し
今年も大学受験シーズンを迎える。学力を測る一般選抜で入学する学生の割合が減る一方、総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)など、9~12月ごろまでに合否まで決まる「年内入試」の割合が全国的に増えている。茨城県内では茨城大が総合型選抜の一部で、試験日と合格発表を従来より約1カ月前倒しするコースを設けた。入試の多様化はほかの大学でも見られ、「年内入試」の拡大とともに、学生を多面的に評価する動きが広がっている。
いわゆる「年内入試」は、学力を測る1~3月の一般選抜と異なり、主に小論文や面接、書類審査によって人物や意欲を重視する選抜方法。生徒にとって早く進路を決められるのも特徴だ。少子化で受験生が減る中、導入する大学が増えている。文科省の調査によると、今春入学者のうち「年内入試」は過半数を占め、私立に限ると、その割合は6割を超えた。
茨城大は来春入学の入試で、教育学部と農学部の一部コースに総合型選抜を導入した。試験日を10月、合格発表を11月とし、従来より約1カ月早い日程にした。高校側から生徒の探究活動を評価してほしいといった要望があったほか、全国で早期に学生を確保する動きが一段と加速していることなどから、今後は「年内入試」の入学者を現在の2割台から3割程度に増やすことを目指している。
■「地域枠」に
このうち教育学部の総合型選抜は「地域教員希望枠」として、入学生が所定のプログラムを修了すると県の教員選考試験が受けられる予定。教員を目指す優秀な学生を確保するための方策でもあり、合格者が入学するまでの間に大学で先取り履修できる体制も整えた。
県内のほかの大学でも特徴ある入試が行われている。筑波大は、総合型選抜で研究者を目指す人を対象とした「研究型人材入試」を実施。グローバル選抜として帰国生徒や私費外国人留学生を対象とした「海外教育プログラム特別入試」などもある。私立大では、茨城キリスト教大に「帰国子女入試」がある。常磐大には、法人が設けた学校を卒業した親族の推薦による「卒業生推薦」などがある。
■幅広い力を
大学入試などに詳しいベネッセ教育総合研究所(東京)は、「年内入試」が拡大する背景について、変化が激しい社会では認知能力だけでなく、幅広い力が必要になっていると指摘している。資質や能力を適切に評価するためには従来のペーパー試験だけでは不十分で、選抜方法も多様化してきたという。
国立大学協会が総合型選抜や学校推薦型選抜の拡大を掲げていることや、東北大が総合型選抜の入学者を2050年に100%にする方針に触れ、今後も年内入試の定員は増えていくとしている。











