茨城県、福祉相談業務にAI 端末、支援メニュー提示
茨城県は24日、汎用(はんよう)クラウドサービスの生成人工知能(AI)を活用した福祉相談業務を本格的に導入する。生活保護や生活困窮などの相談内容を入力することで、AIが適切な公的制度や支援メニューを提示。職員の迅速で的確な案内が実現する。会話を自動で要約するなど記録作成作業の負担が減るほか、タブレット端末の導入によって紛失などによる個人情報流出のリスクが減る効果がある。
県福祉人材・指導課によると、個人情報を含む相談業務で汎用クラウドの生成AIを用いるのは全国の自治体で初めて。端末は県福祉事務所4カ所に配備され、各事務所が管轄する県内12町村の住民が生成AIを活用した相談を受けられる。
AIは相談を聞き取った職員が内容を端末に入力すると、事前にクラウドに保管した法令や制度、支援メニューから適切な情報を示す。例えば、対人関係に不安がある人が就職を希望する場合、AIがコミュニケーション能力の訓練機関「地域若者サポートステーション」の利用から就職までの流れを提示する。
相談時の会話内容は自動で文書化され、記録様式に整えられる。情報は各事務所ごとに内部で共有されることから、次回以降の相談対応が円滑になる。端末は事務所の外に持ち出せ、役場や公民館などでの「出張相談」や家庭での訪問相談でも使える。
県福祉事務所4カ所が昨年度に受けた相談は7152件で、増加傾向にある。内容も生活困窮や障害、孤立、就労などさまざまで、迅速・的確に対応できるかが課題となっていた。
これまでは職員が手書きでメモを取りながら相談に応じていた。このため相談に集中できず、支援に最適な資料を探すのに時間がかかるほか、音声の文字起こしによる記録を作成する作業が負担となっていた。外部に紙の資料を持ち出すことは、紛失によって相談者の個人情報が流出する危険があった。
今後は記録作成に要した時間を町村など関係機関との調整業務に振り分け、支援の質向上につなげる。汎用クラウドは政府のセキュリティー基準に適合し、端末にはデータが保存されないため、仮に端末を紛失した場合でも個人情報漏えいの危険を避けられる。
県は9月24日から実証利用を行い、今月16日までに約630回使用した。職員から「相談に集中できる」「より正確に記録が残せる」などと好評だったことなどから、本格的導入を決めた。
県の事業のため、社会福祉法に基づき福祉事務所の設置が義務付けられる市には、生成AIの活用や端末は配備されない。このため、同課は「住民サービスの向上のため、利用実績を重ねて有用性を示し、県内32市にも導入を広げていきたい」としている。











