「妻と守った火 消さない」 31日閉店、継承者求む 水戸のそば店「与三郎庵」 茨城
茨城県水戸市木葉下町で27年間愛された手打ちそばの店「与三郎庵」が31日、閉店する。自家栽培の常陸秋そばを使った「十割そば」が人気で、地元の常連客は「飲食店の少ない地域で貴重な社交の場だった」と惜しむ。店主の森田與一さん(86)は気力と体力の衰えを理由に閉店を決めたが、「亡き妻と守ってきた店の火を絶やしたくない」と、継承者を探している。
店は森林が広がる同市西端の県道沿いにある。看板メニューは、自ら育てた旬の野菜を揚げた「十割天もりそば」。自身がそば農家で、提供するそばの7割を自家製の常陸秋そばで打つ。黒みがかった田舎そばは香りや歯応えが強く、そば通を喜ばせてきた。
開店以来の常連という河原井忠男さん(78)は「地域で初めてできた飲食店で、農作業後の昼食や法事などいろいろな場面でお世話になった。『おらんち』の本物のそば屋だったのに」と肩を落とす。
1998年、森田さんは趣味のそば打ちを生かして妻のとも子さんと店を開いた。店名は同地を開拓した4代前の先祖にあやかった。営業は夫婦手探りで、森田さんがそば打ちとつゆ作り、とも子さんがそば以外のメニューを担当した。
「最初はそばとは呼べないような代物だったけど、『田舎そばはこれがいいんだ』ってお客さんが褒めてくれたから続けられた」と感謝する。
80代になると体力的につらいことも増えたが、二人三脚で店を切り盛りし営業を続けた。2歳年下だったとも子さんは、85歳になるまで店を続ける目標を立てていた。森田さんは「心が燃えて、まだやらなきゃと思った」と振り返る。
だが昨年10月、つらい時が訪れた。その日は森田さんの85回目の誕生日。店で祝ってもらう予定で、約70メートル離れた自宅のとも子さんを電話で呼ぶと、「あいよっ」と弾んだ声が返ってきたという。しかし、とも子さんは帰らぬ人となった。徒歩で戻る途中、店の前の横断歩道で車にはねられ、亡くなった。82歳だった。
「心がぺしゃんとなって何もやる気がなくなった」。気力はうせたが、あと3年は店を守ろうと営業を続けた。それでも心の糸が切れ、年末で区切りを付けることにした。
閉店を決めた後、とも子さんの菩提(ぼだい)寺にある墓の前で手を合わせて伝えた。「一緒にやってきたのに、いなくなって1年で畳んでごめんね。悔しいよ」
森田さんは店ののれんを下ろすが、「与三郎庵の火は消したくない」と、継承者を募る。店の味を継ぐ意志とそば打ち経験のある人に技を伝え、居抜きで店を貸したい考えだ。
問い合わせは森田さん(電)029(254)2284。











