診療報酬プラス改定 評価も不足感 茨城県内医療機関 「さらなる支援を」
政府が2026年度当初予算案を閣議決定し、医療機関の収入である診療報酬を全体でプラス改定とした。物価高騰や人件費上昇で経営難が深刻化する茨城県内の医療機関からは「一定の前進」と評価の声が上がる。一方で、引き上げ幅と物価上昇率との乖離(かいり)から「これでは足りない」との本音も漏れる。関係者は地域医療を守るため、さらなる支援の必要性を指摘する。
診療報酬は医師の技術料や人件費に当たる「本体」部分と医薬品などの「薬価」部分で構成される。改定は2年に1度。今回は「本体」を3.09%引き上げる一方、「薬価」を0.87%引き下げ、全体では2.22%のプラスとなった。
これを受け、県医師会の松崎信夫会長は「正直に言うと、喜び半分、疑心暗鬼が半分といったところ」と複雑な心境を吐露する。
松崎会長は14年度以来となるプラス改定に加え、国の25年度補正予算で賃上げや病床削減に関する支援が盛り込まれたことを評価。「ある程度、医療機関の厳しい状況を理解してくれた」とする。
ただ、引き上げ幅は物価上昇率とまだ開きがあり、補正予算での支援は一時的だと指摘。「県内診療所は4割が赤字。物価上昇に見合った改定でないと他業種との競争となる人材確保が厳しくなる。原資がなければ国が進める医療DX(デジタルトランスフォーメーション)も進まない」と強調する。
地域の救急や周産期、小児医療などを支える水戸赤十字病院(同県水戸市)。経営は厳しい状況にあるという。改定について、同院の野沢英雄院長は「物価や人件費高騰に直面する医療現場にとって、大きな支援」との認識を示す。
現在は国の補助金などを活用しながら経営改善策に取り組む。今後も医療人材の確保と賃上げ対応が急務として「改定への対応に加え、補助金や支援金、税制など総合的な財政支援を国に求めたい」とした。
県立中央病院(同県笠間市)、こころの医療センター(同市)、こども病院(水戸市)の県立3病院は、24年度決算で計約15億円の赤字を計上。県は国に対し、診療報酬の大幅な引き上げを強く要望していた。
県病院局経営管理課の岡崎一裕企画室長は「引き上げは一定の評価ができる」とした上で「これでは足りない」。改定の具体的な内容については「今後の議論などを見て精査したい」として言及を避けた。











