心で糸をより合わせ 茨城県展特賞・日立の益子さん 大作に情熱、繊細な織り
50代後半から織物を始めた茨城県日立市金沢町の主婦、益子ミツ子さん(77)が、作品「宙1.陰」で2025年度県芸術祭美術展覧会(県展、工芸美術)の特賞に輝いた。巧みな技術や色彩バランスなどが高く評価された。喜寿を迎えた今も、自宅で織機(高機(たかばた))を使い、繊細で独創的な作品を生み出し続ける益子さん。「自分が持っている技術を生かし、もっと頑張りたい」と意欲を見せる。
特賞作は縦157センチ、横138センチの大作。対の作品として、ほぼ同サイズの「宙2.陽」も入選した。「陰」は月、「陽」は太陽を指し、そのデザインが作品中央に入る。両作品は昨年11~12月まで県近代美術館に展示された。
県展(工芸美術)審査主任の井上英基さんは、特賞作について「巧みな織り技法により構成されたパッチワーク的な造形が特徴」「色彩のグラデーションのバランスが精密に計算された優作」と高く評価。繊細な織りの技法や多様な色彩が鑑賞者の目を引きつけた。
幼少期から手作業が好きな益子さんが、本格的に織物を始めたのは58歳の時。当時、偶然立ち寄ったギャラリーで裂織を見て「自分もやりたい」と触発された。織り方を学ぶ日立市内の教室に通い、市主催の美術展覧会で市長賞を受賞するまで上達した。
約15年間教室に通った後、現在は1人で作品づくりに挑戦。県展では、23年度に「春の里山」で優賞を受賞している。
益子さんの作品づくりは、イメージ図を描くことから。どのようなデザインにするか構想を練り、作品と同サイズの図を作成する。もっとも時間を要するのが、制作全体の「半分くらいを占める」という糸作り。専用の織り糸や毛糸などを「より合わせ」、太さや質感の異なる糸に仕上げる。
織り作業は織機を使う。専用の道具で糸を横に滑らせながら、下に広げたイメージ図に沿うよう、丁寧に織り重ねる。納得できなければ「糸をほどいてやり直す」という徹底ぶり。根気と時間を要し、今回の両作品は、完成までそれぞれ3カ月もかかった。
両親や夫の介護を長く経験し、そのような環境下で「趣味」という織物は、心のよりどころの一つ。特賞は「自分へのご褒美」と控えめに喜ぶ。「また県展に出品できるようにもっと頑張りたい。より大きな作品を作ることも考えている」と、織物に傾ける情熱はやまない。











