《広角レンズ》救急救命士 病院で活躍 医師・看護師の負担軽減 茨城
救急救命士の活躍の場が病院に広がっている。2021年の法改正により、それまで救急車内など患者搬送中に限られていた救急救命処置が搬送から入転院までの救急外来でも可能になったためで、病院に勤務する救命士が出始めた。医師や看護師の負担軽減や地域医療の支えとなることが期待される。一方、現場での育成には課題もあり、病院救命士たちの間には自主的に研さんを積む動きも見られる。
茨城県鹿嶋市厨の小山記念病院。昨年10月、午前10時過ぎの救急外来に、患者が次々と搬送されてきた。激しくせき込む男性に、意識がもうろうとした高齢者。医師や看護師らの傍らで、指示を受けた救命士は点滴の準備を進めた。
同病院では4人の救命士が勤務。その1人、芹沢優志さん(25)は「患者は常に急変のリスクがある。搬送時の第一印象には特に注意を払う」と話す。
■タスクシフト
救急救命士法が改正された背景には、医師の働き方改革に伴い業務の一部を他の医療専門職に移す「タスクシフト」がある。看護師が行っていた業務を部分的に救命士が担うことで、医師を含めたチーム全体で負担を分散させる狙いだ。
病院救命士の存在により、結果的に消防救急車の適正利用が進むことも期待される。国は昨年7月、転院搬送のルール化に向けたガイドラインを改訂。転院搬送が消防機関の救急業務を圧迫しているとの視点から、地域の実情に合わせて病院救急車の活用促進を求める通知を出した。
同病院でもこの日、救急外来の患者を県南の病院に搬送することになり、救命士1人が医師と共に病院救急車に乗り込んだ。
消防庁の24年版「救急救助の現況」によると、全国の転院搬送件数は14年の約49万8000件から23年は約55万6000件に増えた。救急出動件数に占める割合は14~21年は8%台で推移。法改正後の22年は7.4%と前年から約1%減ったが、23年も7.3%と横ばいが続いている。
■2次こそ必要
同法によると、救命士は「医師の具体的な指示」を受けなければ救急救命処置を行えないとされる。各病院は救命士が行う業務をあらかじめ定めて対処。ただ、同法や施行規則には処置の詳細な内容について明記されていない部分もあり、判断が病院によって分かれることもある。
また、法改正から日が浅いため、病院救命士の認知は高くないのが現状だ。「今でも救急車に同乗して事故現場に向かうイメージで見られる」。20年まで消防救命士を務め、現在は同県龍ケ崎市中里の龍ケ崎済生会病院で病院救命士として勤務する嶋田勇一さん(47)は語る。
県内でも一つの病院に数人が勤務する態勢がほとんど。そのため人材育成で課題がある。嶋田さんは他病院の救命士と情報交換し、組織を超えて互いの知識や経験を共有することを目指している。消防と病院双方の現場で得た知見を伝えるため、講習会で指導役も務めている。「消防の現場を知っているからこそ、電話連絡だけでも状況をスムーズに把握することができる」と力を込める。
鹿行地域のように3次救急医療機関がない所では、患者は県外に転院搬送されることも少なくない。小山記念病院の医師、小田有哉さん(39)は「2次救急機関にこそ救命士が必要」と訴える。「地域の救急医療のマネジメントを担うと同時に、病院全体の救命能力を高めるためのリーダーになってほしい」と救命士の活躍に期待を寄せた。











