歓迎の梅のフレスコ画 2月、水戸に新美術館 制作者・丹羽さん 斉昭の思い重ね 茨城
茨城県水戸市泉町に昨秋開業した複合文化施設「テツ・アートプラザ」で、中核となる新美術館が2月に誕生する。玄関ホールで来館者を華やかに迎えるのが、流水に浮かぶ梅の花を表現したフレスコ画だ。徳川斉昭が偕楽園の造園時に構想した泉をモチーフに、日本のフレスコ画制作・研究の第一人者、丹羽洋介さん(82)=富山県富山市=が手がけた。丹羽さんは領民に対する斉昭の思いを重ね、「美術館は市民に開かれた憩いの場。フレスコ画が歓迎の象徴となれば」と開館を心待ちにする。
水戸市の中心街に誕生するのは「クヴェレ美術館」。丹羽さんは施設を管理する哲文化創造公益財団法人(福田三千男理事長)から、「美術館を華やかに彩る作品を」とフレスコ画の制作を依頼された。
「フレスコ」はイタリア語で「新鮮な」を意味し、フレスコ画は生乾きの漆喰壁に、水で溶いた顔料で描く技法をいう。古代エジプト時代からヨーロッパのルネサンス期にかけて、宗教的題材や神話など歴史的出来事が描かれてきた。
香川県生まれの丹羽さんは東京芸術大大学院などで壁画を学んだ。同大学院では絹谷幸二氏(1943~2025年、文化勲章受章者)と研究や制作で切磋琢磨(せっさたくま)し、日本フレスコ画界の黎明(れいめい)期を盛り上げた。
1980年代にイタリア政府給費留学として古代ローマの壁画を現地で研究。90~2000年代には日本から海外研究員として派遣され、スペイン先史の壁画やタイ王宮寺院の壁画の研究に携わる。富山大で教壇に立つ傍ら、同大や各地の公共施設でフレスコ画を手がけてきた。
今回の作品は施設が旧銀行建屋という歴史的建物を活用していることに着目。「地元の歴史を考えた末、水戸藩の教育振興に尽力した9代藩主、斉昭公の世界観に至った」という。
作品は25年9月中旬から約1カ月をかけ、玄関ホールの階段側の壁に仕上げられた。縦約210センチ、横約180センチで、題名は「玉龍泉流梅図」。「玉龍泉」は斉昭が偕楽園の造園時に地形の落差を利用して造った噴水式の泉で、遺構は今も現存する。「泉から流れる水に映る梅の花を想像し、絵の原案とした」
幾筋もの曲線が重なり合い、線の内側を彩る朱、黄、緑、青、紫には点描や模様が施されている。ちりばめられた梅花は斉昭の別称「烈公」にちなんで名付けられた「烈公梅」という。漆喰を彫刻的に盛り上げて作ったものと、同県常陸大宮市産の和紙を何枚も重ね貼りした2種類があり、画面全体から息吹が伝わる。
烈公梅を素材にしたことから、制作中に「テーマは(斉昭が偕楽園創設の趣旨を記した)偕楽園記ですか」と問われたという。「言われれば、水流の表現となる曲線のうねりと強弱のリズムは、偕楽園記にある『一張一弛』の精神に通じるのかもしれない」
丹羽さんは偕楽園が領民と共に楽しむ場を目指したことに触れ、「市民に開かれた新しい美術館で、フレスコ画がおもてなしの一輪になれたら」と願いを込める。











