せんべい一筋70年 苦渋の閉店 「水戸入船堂」愛顧に感謝 米価や燃料費高騰影響 茨城
手焼きせんべいを販売する茨城県水戸市南町3丁目の「水戸入船堂」が3月末で70年の歴史に幕を閉じる。店主の佐川亮太さん(52)が母の正子さん(78)と切り盛りし、長年にわたり常連客や地域住民に愛されてきたが、米価や燃料費の高騰による経営難の影響で閉店を決めた。亮太さんは「支えてくれるお客さんがいたから頑張れた」と感謝をかみしめる。4月からは同店の職人が看板を引き継ぎ、市内で新たに出店する。
同店は東京都内の「東京入船堂」で修業を重ねた亮太さんの祖父が1955年、のれん分けで現在の場所に開店した。亮太さんは、25歳の時に受け継ぎ3代目に。以来、約30年にわたり「水戸入船堂」の看板を守ってきた。
米としょうゆだけで仕上げた素朴でやさしい味が同店の特徴。袋を開けた瞬間、香ばしい香りが立ち上る。さらに米は、古米や外国産米に頼らず、県産にこだわり続けてきた。
店頭には県産コシヒカリを100%使用した定番の「千両」をはじめ、サクッとした食感が癖になるおかき「秋の夜」など、10種以上のせんべいが並ぶ。
スーパーで安く多様なせんべいが手に入るようになり、「わざわざ買いに来る人は少なくなった」と正子さん。それでも続けてこられたのは「いいものを届けたい」との思いが強かったからという。
50年以上通う同県土浦市の80代女性は「混ざり物のない本物の味。おいしいので子どものころから食べ続けている」と話す。
しかし、近年の米価や燃料費の高騰が経営を直撃した。亮太さんは「やりくりが難しくなった」と、やむを得ず閉店を決断。正子さんは「長年ここで営業し、街の景色に溶け込んでいた」とさみしさを漂わせた。
看板自体は絶えず、長年せんべいを焼いてきた職人が引き継ぐと決まっている。4月16日、同市泉町の京成百貨店地下1階で新たに開店するという。
長い歴史を歩んだ南町の水戸入船堂は、3月末で閉店。涙ながらに買いに来てくれる人もいたといい、「お客さんに大切にしてもらえたから、やってこられた」と2人は感謝の思いを新たにする。
自身の代で幕を下ろすことに「後ろめたさがないわけではないが、やり遂げた。入船堂を引き継いでよかった」と亮太さん。その時が刻一刻と迫る中、晴れやかな表情を見せた。










