米イラン停戦合意 茨城県民受け止め冷静 安堵と懸念が交錯
「停戦にほっとした」「本当に争いは終わるのか」。米国とイランの即時停戦合意が発表された8日、茨城県内では冷静に受け止める声が目立った。中東情勢の悪化に伴う原油高騰により、物価が上昇。和平合意に至ることを期待するものの、二転三転するトランプ米大統領の言動に世界中が振り回されてきただけに、県民の間で安堵(あんど)と懸念が交錯する。
水戸市の茨城大4年、戸田雄毅さん(24)は「今回の戦争では民間人、特に子どもが犠牲になったニュースを目にするたび、心が痛かった。停戦すると聞き、ほっとした」と安堵の表情を浮かべる。一方で、和平合意に至らなければ、再び悲劇が繰り返されるとして「この停戦が維持されるのを願うばかり」と祈るように話した。
中東情勢の混乱で、原油価格の上昇から物価高につながり、市民生活は大きな打撃を受けている。
鹿嶋市内でガソリンスタンドを経営する鹿島製油取締役の内野晴輝さん(31)は「即時停戦は合意されたが、タンカーがちゃんと中東から日本に来るのか、価格にどう反映するのかまだ分からない」と気をもむ。
守谷市の主婦、藤森昌代さん(57)は、東日本大震災の時のような買い占め行動が起こるのではないかと警戒していたといい、「今回の停戦合意で少し安心できた」と語る。ただ「物価への影響が完全になくなったわけではないと思う」と現状を冷静に受け止めている。
古河市内に住む学校支援員、畠中紀子さん(56)は、停戦の実現により「ガソリン代や物価の値上がりが落ち着いてくれるといい」と願う。「孫や家族の送り迎えなど、普段の生活は何かと車を使う。値上がりが続くと本当に厳しい」と切実だ。
トランプ氏の言動に、不信感を募らせる人もいる。
高萩市の無職、菊地恵雄さん(77)は、トランプ氏がこれまで発言を二転三転させていたとし、「どこまでが本音なのか、信用できない。本当に争いは終わるのか」と疑う。コメ作りの機械には燃料が欠かせないため、「せっかく下がってきたコメの値段も上がってきてしまうのではないか」と懸念する。
■農業、漁業、物流は慎重 「様子見」「補助手厚く」
不安定な中東情勢は、原油高につながり、県内企業や基幹産業である農業、漁業にも大きな影響を及ぼしてきた。
食品輸配送の茨城乳配(水戸市)は、月に16万リットルの軽油を消費する。米国によるイランへの攻撃開始後すぐに自家タンクを満タンにしたが、石油元売りからの供給がなくなるのを警戒して使用せず、ガソリンスタンドで給油している。
コスト増になるが、吉川国之社長(57)は「消費者が生きるために必要な物流。給油を約束してもらうまでは様子見する」と慎重だ。「急騰した価格は同じスピードで落ちない。政府はもう少し補助を手厚くしてほしい」と要望する。
キュウリや小松菜などを栽培するアクト農場(茨城町)は、ビニールハウスの暖房で使う重油の価格が1リットル当たり80円から150円に上昇し、野菜を詰めるポリエチレン製の袋も3割値上がりした。関治男代表(74)は、日本政府に「輸入する油、ナフサ、肥料が高く、負担が重い。円安にならない方向にしてほしい」と注文する。
トマト栽培の関口農園(龍ケ崎市)も梱包(こんぽう)資材の値上がりが悩みの種。関口修一代表(55)は「トランプ大統領は冷静になってもらいたい。ホルムズ海峡が元通りに通航できるようになればいい」と望んだ。
漁船の燃料や網などの資材の高騰に苦しむ漁業。大洗町でシラス漁を営む小沼徹平さん(27)は「正直、遠くの漁に行くのをためらう気持ちもあった」と明かす。「まだ軽油は高いまま。早く価格が下がるとうれしい」と話した。
■国際政治に詳しい筑波大学人文社会ビジネス科学学術院人文社会科学研究群の東野篤子教授の話 脱最悪期見通し
日本の原油輸入における中東依存度は9割を超えることから、今回の停戦合意は日本経済にとってプラスに働く。最悪期からは脱しそうな見通しだが、危機が去ったとは言えない。県内は石油精製や石油化学を扱う工業地帯や製鉄所が所在し、原油やナフサの価格が急乱高下するだけでも影響は大きい。停戦状態が続けば、恒久的な和平でなくとも、原油価格の調整や物流などのコストの軽減は期待できる。一方、各国の意向と攻撃能力によっては合意が覆る可能性は残り、決して安心材料とは言えない。









