【デスク日誌】人それぞれ桜に思い出

数日前、水戸市の県三の丸庁舎前のお堀沿いの桜を車窓から眺めた。若い桜が風に揺れ、淡い花の色が目に残った

▼同じ場所での25年前を思い出した。入社初日、通勤途中に靴底が剥がれ、不安を抱えたまま歩いていた。見上げた先には歩道を覆うソメイヨシノ。背中を押されるような気がした。会社から靴を借り、入社式を終えた。初めての取材も同所でのライトアップイベントだったと記憶している

▼桜並木は老木化などで植え替えが進み、現在は若い木が中心となった。かつての趣とは違うものの、すがすがしい春の姿がある

▼松尾芭蕉は〈さまざまの事おもひ出す桜かな〉と詠んだ。花に重なる記憶は人によって異なる。本紙では毎年各地の名所を紹介しているが、抱く思いは一様ではない。春を迎える新社会人の胸にも、それぞれの桜が刻まれていくことだろう。(整理部・船橋義勝)