2017年9月24日(日)

【論説】原発事故避難者訴訟 支援拡充の検討を急げ

東京電力福島第1原発事故により福島県から千葉県に避難した住民らが国と東電に計約28億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、千葉地裁は東電に3億7600万円余りの賠償を命じた。原告側が重視した国の責任を巡っては「重大な過失はなかった」とし、東電とともに国への請求も認めた3月の前橋地裁判決とは異なる判断を示した。

その一方で、故郷の風物や仕事、人間関係を奪われたとして原告側が主張の柱に据えた「ふるさと喪失」の慰謝料を認めた。国の責任が認められず、弁護団は「不当判決」と控訴する方針を明らかにしたが、ふるさと喪失の慰謝料を初めて認定した判断は「前進」と前向きにとらえている。

原発事故避難者による集団訴訟は少なくとも全国の20地裁・支部で30件近くあり、原告総数は1万2千人を超える。判決は前橋に続き、千葉が2件目。来月には原告数が3800人以上と最大規模の訴訟の判決が福島地裁で言い渡される。いずれも国と東電の責任を追及しており、司法判断が今後どのような形で定着していくか注目したい。

一連の訴訟は長期化するだろう。ただ避難者の多くは国の指針に基づく現行の賠償制度に不満を抱いており、今回の判決も制度が避難者の損害や苦しみなどを十分にカバーしきれていないとの立場を取っていることを考えれば、指針の見直しも含め支援拡充の検討を急ぐことが求められる。

前橋地裁判決は「津波を予見できたのに対策を怠った」として国と東電の責任を認め、国について「規制権限を行使すれば事故を防げたのにしなかった。著しく合理性を欠き、違法」と東電に必要な津波対策を取らせなかったことを厳しく批判した。この点、千葉地裁判決は対照的だった。

巨大津波を予見できたかについて、国の機関による長期評価を基に原発敷地の高さを超える約10メートルの津波を国も東電も予見できたとし、原告側の主張を受け入れた。だがリスクの全てに資金や人材を費やすことは不可能で、対策を取っても事故を回避できなかった可能性があると指摘。「規制権限の不行使は著しく合理性を欠くとは認められない」と結論付け、国の対応に理解を示した。

原発事故がもたらす甚大な被害を考えると、高い安全性が要求される原発について資金的制約などから、対策の先送りが許されるのか疑問が残る。リスクを過小評価しているとの批判もある。

そうした中でも、ふるさと喪失の慰謝料や自主避難者への賠償増額を認め、国の指針に基づく東電による賠償の範囲を超えたことは評価できよう。文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会が2011年に指針を定め、避難指示区域からの避難者は月10万円、18歳以下や妊婦を除く自主避難者は総額8万円となっている。

賠償額に不満がある場合は申し立てを行い、それでも解決しなければ訴訟を起こす仕組みになっている。千葉地裁は「避難生活に伴う慰謝料では補填(ほてん)しきれない」として、指針による賠償とは別の枠組みで、ふるさと喪失の慰謝料を認めた。

弁護団は「金額が低い」としているが、各地の訴訟にも影響は広がっていくだろう。これを救済拡大の一歩とし、避難者に寄り添った支援の在り方を考えていきたい。

2017 年
 9 月 24 日 (日)

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