2020年8月13日(木)

【論説】香港統制本格化 中国は弾圧をやめよ

6年前に香港で起きた大規模な民主化要求デモ「雨傘運動」を率いて「民主の女神」と呼ばれた活動家、周庭氏(23)と、中国に批判的な香港紙、蘋果日報の創始者、黎智英氏(71)が国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕、保釈された。

著名で影響力の大きい民主派の両氏訴追の動きは中国・香港政府が6月末に制定、施行した国安法による統制を本格化させ、香港の「一国二制度」を根底から破壊し始めたことを示す。

香港の自由と民主主義を求める住民は反発し、日米欧など国際社会からも懸念や批判が表明された。中国はこうした声に耳を傾け、民主派弾圧をやめて一国二制度の維持を図るべきだ。

周氏は政治団体「香港衆志(デモシスト)」の元メンバーで、国際社会に香港民主化への支持を求める活動を展開。日本語が流ちょうで、来日もして支持を働き掛けた。

今回は外国政府に香港への制裁を訴えたとして、外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えた罪を犯した疑いがかけられたという。周氏は保釈後「これまで4回逮捕されたが、最も怖かった。旅券を没収された」「国安法は政治的弾圧のため」などと語った。

黎氏は香港返還の2年前に蘋果日報を創刊。紙面を通じて中国の非民主的な政治体制を痛烈に批判する一方、自らデモに参加したり、民主派に資金を提供したりする活動を続けてきた。昨年7月に訪米した際はペンス副大統領やポンペオ国務長官と面会し、香港情勢について意見を交換した。

菅義偉官房長官は両氏逮捕に「重大な懸念を有している」と述べ、一国二制度に支持を表明。ポンペオ氏は黎氏逮捕について「中国共産党が香港の自由と人権を侵害している証拠」と批判した。

中国外務省報道官は「香港問題は中国の内政であり、外部勢力の干渉は許さない」との従来の発言を繰り返す。

しかし、香港では蘋果日報が売り切れ、黎氏のメディアグループの株価が大きく上昇するなど無言の支援が広がった。香港の中国化に反対し、自由と民主主義を求める世論は根強く、強権で香港の安定を長期に維持するのは難しい。民主派弾圧により、住民の反中感情はより高まるだろう。

民主派は反中ムードの高揚を受け、昨年11月の区議会選挙で圧勝、今年9月に予定されていた立法会(議会)選挙で過半数獲得を目指した。だが、選管当局は国安法を支持しないことを理由に民主派12人の立候補を認めていなかった。

その後、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に選挙自体が1年間延期された。国安法施行への反発が民主派候補への追い風になり、親中国派候補に不利と当局が判断したもようだ。

米英、オーストラリアなど5カ国外相は共同声明で、選挙延期について「香港の安定と繁栄の根幹である民主的手続きを損なう」と批判。茂木敏充外相も記者会見で「重大な懸念」を表明した。

中国の全国人民代表大会(全人代=国会)は選挙延期に伴い、とりあえずは民主派を排除せず全現職議員の任期延長を決めたが、来年の選挙では再び国安法を盾に排除してくる可能性が大きい。

日米欧など国際社会は中国・香港政府の動向を注視し「自由で公正な選挙」の実施を粘り強く働き掛けていきたい。

2020 年
 8 月 13 日 (木)

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