2019年12月15日(日)

【論説】米中貿易合意 最終解決へ一層の努力を

米中両国は貿易協議の「第1段階」の合意に達した。中国は米農産品を大量に購入、米国は15日に予定していた新たな制裁関税の発動を見送り、第4弾として発動済みの1200億ドル(約13兆円)分の税率を15%から7・5%に引き下げる。

昨年7月に関税合戦が始まって以来、税率引き下げは初めて。世界第1、第2の経済大国米中の貿易戦争は両国だけでなく世界の経済に深刻な打撃を与えてきた。今回の合意を歓迎したい。

両国は合意を誠実に実施するとともに第2段階の協議を推進し、最終的な解決に向けて一層の努力をするべきだ。米中は安全保障や人権、台湾など多くの対立を抱えるが、各問題を冷静に切り分け、まずは喫緊の貿易摩擦の収束を目指したい。

米通商代表部(USTR)によると、第1段階は、中国の(1)知的財産権保護の強化(2)技術移転強要の是正(3)金融部門の市場開放(4)意図的な通貨安誘導の抑止-などを含む。農産品やエネルギー、工業製品などの対中輸出は今後2年間で2千億ドル増える見通しだという。

中国の王受文商務次官は記者会見で、知的財産権を保護する姿勢を強調し「双方が合意を順守し、努力して実行するよう望む」と述べた。

米中の貿易協議は極めて難航した。昨年12月のトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談では、中国が90日以内に構造改革案をまとめることなどで合意し、解決に向かうかに見えた。

しかし、今年5月、中国側は法改正の確約を迫る米側に「国家の尊厳に関わる」(劉鶴副首相)と激しく反発し、交渉は決裂。米国は第4弾の追加関税に踏み切った。

今回合意に至った背景には、両国ともにこれ以上の景気悪化は耐えがたいという事情があった。トランプ氏は来年11月の大統領選を控えて対中輸出の激減に苦しむ農家や製造業者の支持離れを警戒。習氏も成長が減速する中で下振れ要因を減らしたい思惑があった。

双方は難題の「国有企業への産業補助金の廃止」を先送りし、何とか部分合意にこぎつけた。だが、米側の中国製品2500億ドル分に対する25%の追加関税(第1〜3弾分)は残る。両国は柔軟さを発揮して、補助金問題でも合意点を見いだし、報復関税ゼロを早期に実現してほしい。

米国は毎年、香港の民主状況を検証する香港人権・民主主義法を成立させた。さらに米下院はウイグル族を弾圧する中国当局者に制裁を科すウイグル人権法案も可決。中国は両法に「内政干渉」と猛反発する。

来年1月には台湾で4年に1度の総統選が行われる。米国は再選を期す対中独立志向の蔡英文総統を支持し、台湾への武器売却を決めた。蔡氏を独立派とみる中国は台湾孤立化策を進め、蔡氏追い落としを図る。また、米国は「航行の自由」を主張して、中国が軍事拠点化を進める南シナ海へ軍艦を再三派遣し、けん制。2年前から顕在化してきた米中の覇権争いは激しい。だが、米中二大国は世界経済に対する自らの責任を認識し、公正なルールに従って経済貿易関係を正常化するべきだ。

第3の経済大国日本は米国と良好な関係を持ち、尖閣諸島国有化で悪化した中国との関係改善も進んだ。米中のはざまで、双方に貿易協議の早期妥結を促したい。

2019 年
 12 月 16 日 (月)

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