2018年11月20日(火)

【論説】日産ゴーン会長逮捕 トップの不正 徹底究明を

東京地検特捜部は日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者を金融商品取引法違反の疑いで逮捕し、横浜市にある本社を家宅捜索した。この法律に基づいて、投資家による合理的な投資判断に資することを目的として企業は有価証券報告書で財務状況などを開示しているが、その中で自らの役員報酬を過少に記載した疑いが持たれている。

役員報酬は対象の事業年度に支給されたり、支給される見込みが明らかになったりした額について、取締役や監査役ら役員ごとに総額と、基本報酬や賞与などの種類別の総額を記載する必要があり、こうした記載は投資家の重要な判断材料となるため、虚偽記載は10年以下の懲役または1千万円以下の罰金となる。

ゴーン会長は深刻な経営危機に陥った日産にフランスのルノーから派遣され、1999年に最高執行責任者(COO)となり2000年に社長に就任。経営立て直しのため徹底した合理化を進め、その後、三菱自動車との提携を手掛け、16年12月にはその会長にも就いた。日産はゴーン会長解任を取締役会に提案すると明らかにした。

日産にとっては、この上もなく大きな存在であり、今回の逮捕による衝撃と経営への影響は計り知れない。しかし内部調査では会社資金の私的流用疑惑も浮上しているとされ、投資家の信頼回復に向けて自らの手でトップの不正を徹底究明することが求められよう。

日産が発表した「ゴーン会長の不正行為」に関する声明によると、日産は内部通報を受け、数カ月間にわたりゴーン会長ともう一人の役員の不正行為を内部調査。その過程で、ゴーン会長が長年にわたって実際の報酬額よりも減額した金額を有価証券報告書に記載していたことが分かった。また会社資金を私的に支出するなど複数の重大な不正行為が認められたという。これまで検察当局に情報を提供しており、今後も引き続き捜査に協力するとしている。

報告書の会長報酬は16年度まで3年連続で10億円を超えていたが、17年度は7億3500万円に大幅に減少していた。逮捕容疑では、11〜15年に報酬を計約50億円過少記載したとされている。

ゴーン会長は日産・ルノー間での生産や購買の共有化を進めて効率化を図る一方で、生産拠点の閉鎖や人員の大幅な削減など大規模なリストラも強力に推進した。その結果、日産は早急に業績を回復し、会長は「日産の救世主」として絶大な力を持つようになった。

さらにゴーン会長はルノーのトップに就任。日産が16年に燃費不正問題で経営が悪化した三菱自動車を傘下に収めると、日産、ルノー、三菱の3社連合を率いる立場になった。3社合わせた18年上半期の世界販売台数は553万8532台と2年連続で首位だった。

日本人経営者にはない合理的で大胆な経営は日産を世界的企業に押し上げた。「コストカッター」の異名を取った経営手法は産業界で広く称賛され、同業他社や他業種の企業もその手法を取り入れるなど日本の経済界への影響も大きかった。

だが、その一方で日産は燃費測定などで不正検査問題を引き起こすなどガバナンスが乱れ、最近は米市場で苦戦するなど「ゴーン流」の限界を指摘する声もあった。立て直しに向け、日産はまず重い説明責任を負う。

2018 年
 11 月 20 日 (火)

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