2016年7月24日(日)

【論説】「英離脱」決定1カ月 不透明さ長期化の覚悟を

英国が欧州連合(EU)離脱を決めた国民投票から1カ月。予想より早く英新政権が発足した一方で、EU側との交渉開始時期や日程、そして離脱の形態など肝心な点は依然見えない。この不透明感はしばらく続き、欧州の政治・外交や経済活動に影を落とすのが避けられない。日本もその影響が及ぶのを覚悟する必要があるだろう。

国民投票が実施されたのは6月23日。直前の世論調査では残留優位との見方もあったが52%が離脱に投じ、残留派のキャメロン首相は辞意表明へ追い込まれた。

与党・保守党の党首選を経て新政権は9月に発足するとみられたが、対立候補の撤退で故サッチャー氏以来、女性として2人目のメイ新首相が7月半ばに就任した。

メイ首相は新内閣の外相にジョンソン前ロンドン市長、新設のEU離脱担当相にデービス下院議員のいずれも離脱派を起用。党内融和を重視し、困難が予想されるEU側との交渉力を高める狙いとみていいだろう。

しかし今後の具体的な交渉となると、新政権発足のような迅速さは期待できないようだ。メイ氏が、スコットランドなどと調整して英国全体の方針が固まるまではEU側と交渉しない意向を示しているためで、EUへの正式な離脱通知は年明け以降とみられている。

その英新政権の姿勢を測る格好の機会が、このたびのメイ首相によるドイツとフランスの訪問だった。EU側は離脱に伴う欧州の不安定期を長期化させないため早期の離脱通知と交渉開始を英国へ求めており、首脳会談における双方の出方が注目された。

ドイツのメルケル首相との会談後にメイ氏は、離脱にかかわらず密接な経済関係を保つことがお互いの利益にかなうと強調。しかしその一方で、準備に時間が必要なため離脱の年内通知は見送る考えを明らかにした。

これに対してメルケル氏は、英国の事情に一定の理解を示しつつも「中ぶらりんは誰も望んでいない」とくぎを刺すのを忘れなかった。同氏は「いいとこ取りの交渉はない」と既に明言しており、EU単一市場への自由なアクセスなど英側に都合の良い条件は認めないのが本音と言えよう。

フランスのオランド大統領はドイツと歩調を合わせつつ、早期の交渉開始をより強く促した。

独仏の大陸二大国が英国に厳しい態度を崩さない背景には、いずれも国内に反EUの右派勢力を抱え、甘い顔を見せれば来年に控える連邦議会選や大統領選でその伸長を許しかねない、との危機感が働いていよう。

離脱問題に伴う不透明感の影響は、経済面に端的に表れそうだ。国際通貨基金(IMF)は先日、今年の世界の成長見通しを3・1%へ春時点の予測から引き下げた。

離脱決定直後に大きく動揺した金融市場は、落ち着きを取り戻している。しかしIMFは、離脱交渉次第で再び市場が揺らぐ事態となれば設備投資や個人消費が冷え込み、英国をはじめ世界の成長が下押しされかねないと警告する。その場合、日本も無関係でいられないのは言うまでもない。

メイ首相として初のEU首脳会議が10月に予定される。離脱にまつわる不透明感を和らげるために、首相自らが離脱の道筋をどう描いているのか、その一端をぜひ示してもらいたい。

2016 年
 7 月 24 日 (日)

メニュー
投稿・読者参加
サービス