2017年12月18日(月)

【論説】長距離巡航ミサイル 国会で徹底的に議論を

防衛省は射程が約900キロに及ぶ長距離巡航ミサイルの導入を決め、2018年度予算案に関係費用を追加要求した。

長距離巡航ミサイルは、北朝鮮の弾道ミサイル発射台をたたく「敵基地攻撃」の能力につながっていく可能性がある。

小野寺五典防衛相は導入の目的にミサイル警戒中のイージス艦の防護や離島への侵攻対処を挙げ、憲法9条に基づく「専守防衛には反しない」と説明するが、野党は「専守防衛からの実質的な転換」と批判している。

北朝鮮の核・ミサイル開発によって安全保障上の脅威は確実に高まっている。ただ、ミサイル防衛の整備は進めるとしても、日本が直接、北朝鮮を攻撃する能力を持つべきなのか。日米間の役割分担や国際社会へのメッセージ、先制攻撃につながる可能性などを総合的に検討する必要がある。

北朝鮮の脅威を理由にした軍備増強は周辺国との軍拡競争に陥りかねない。冷静な状況分析の下、保有の妥当性を国会で徹底的に議論すべきだ。

防衛省が導入を決めたのは、米国開発の射程約900キロの2種類とノルウェー開発の射程約500キロの巡航ミサイルで、戦闘機に搭載する。約22億円を追加要求した。

巡航ミサイルはジェットエンジンで推進し、目標に向かって無人誘導される。900キロの射程があれば、能力的には北朝鮮に近づくことなく、ミサイル発射台などを攻撃することが可能だ。ただし防衛相はそうした目的を否定。菅義偉官房長官も敵基地攻撃能力に関しては「米国に依存しており、見直しは考えていない」と述べている。

しかし自民党の安全保障調査会は今年3月、巡航ミサイルなど敵基地攻撃能力の保有の早急な検討を政府に提言しており、その提言検討チームの座長が小野寺氏だった。防衛相に就任し、自らの提言を実現しようとしているのではないかとも考えられる。安倍晋三首相も先の特別国会で「常に現実を踏まえてさまざまな検討を行う責任がある」と述べ、将来的な検討に含みを残した。

議論すべき論点は多い。巡航ミサイルを保有したとしても、目標に関する情報収集や防空網を突破する能力などが必要だ。北朝鮮に対する「抑止力」の観点から考えても、攻撃能力は米国が持っており、その上に日本が独自にその能力を持つべきなのか。国際的には「専守防衛」の基本原則を転換したと受け止められるのではないか。

ミサイル発射基地を攻撃する目的を突き詰めていけば、発射の兆候をつかんだ段階で攻撃するのが理にかなう。限りなく「先制攻撃」に近づいていくだろう。

政府の統一見解は、ミサイルなどによる「急迫不正の侵害」に対して、他に防御手段がない場合に限り「座して死を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」として、必要最小限度の敵基地攻撃は「法理的には自衛の範囲に含まれ、可能」としている。1956年の鳩山一郎首相の答弁に基づくものだ。

だが、それから約半世紀の間、政府は専守防衛の立場から攻撃用武器は保有しないという方針を堅持してきた。

集団的自衛権の行使を解禁した安全保障関連法に続き、「専守防衛」の基本原則の方針転換につながりかねない攻撃能力の保有を認めるのか。慎重な検討を求めたい。

2017 年
 12 月 18 日 (月)

メニュー
投稿・読者参加
サービス