2016年6月30日(木)

【論説】参院選・歴史認識 安倍談話問い直そう

明確な争点にはなっていないものの、参院選をきっかけに問い直しておくべきことがある。

安倍晋三首相、そして与党の歴史認識である。

昨年8月14日、安倍首相が戦後70年談話を発表して以後、初めて行われる本格的な国政選挙がこの参院選だからだ。

戦後70年談話を作成するにあたって安倍首相は、自民党の高村正彦副総裁や谷垣禎一幹事長、連立パートナーである公明党の山口那津男代表らと事前調整しており、「与党としての歴史認識」という側面もある。

安倍首相は、談話の中で、国際紛争を解決する手段として「侵略」を含む武力の行使を否定し、植民地支配から「永遠に決別」すると掲げたが、日本の行為と直接、関連付ける記述は避けた。

村山富市首相は、戦後50年談話で、日本の行為を侵略、植民地支配と明記。村山氏が太平洋戦争などに批判的な旧社会党出身の首相だったためだが、自民党の小泉純一郎首相も戦後60年談話で、村山氏の認識を引き継ぎ、事実上、日本政府の歴史認識となっていた。

安倍首相の戦後70年談話では、肝心の部分が曖昧になったのだ。

安倍首相はかねて「侵略の定義が定まっていない」として侵略という言葉を使うことに慎重だった。戦後70年談話では言及したことから譲歩したとの見方もあるが、日本の行為と結びつけないことで、自らの主張に沿って歴史認識を微修正した形となっている。

安倍首相は談話発表後の国会答弁で、「具体的にどのような行為が侵略に当たるか否かは、歴史家の議論に委ねるべきだ」との主張を繰り返した。しかし、談話に関する有識者懇談会で座長代理を務めた当時の北岡伸一国際大学長は談話発表後、「『日本は確かに侵略をした。こういうことを繰り返してはならない』と一人称で言ってほしかった」と指摘している。

そして談話発表翌日の終戦記念日、安倍首相は靖国神社に自民党総裁として玉串料を私費で奉納。高市早苗総務相ら安倍首相に近い3閣僚がそれぞれ参拝した。

日本の行為、特に太平洋戦争を侵略と定義したのは70年前の1946年から始まった極東国際軍事裁判(東京裁判)だが、安倍首相はかつて東京裁判について連合国側の「勝者による断罪」と答弁している。一方的で公正さに欠けているという含意であろう。

一方、自民党は昨年12月、日清戦争以降の歴史を検証する「歴史を学び未来を考える本部」を立ち上げた。検証の対象には連合国軍総司令部(GHQ)による占領政策や、その間に行われた東京裁判も含まれている。

本部長の谷垣幹事長は「近現代史の学校教育を充実させるには、まず政治家が勉強をしないといけない」とするにとどめているが、本部設置を主導した稲田朋美政調会長は「判決理由に書かれた歴史認識はずさんだ。日本人自身による、きちんとした検証が必要だ」などと強調している。安倍首相の認識を踏まえているとみられる。

太平洋戦争などを巡る安倍首相の歴史認識は自民党の「歴史を学び未来を考える本部」や戦後70年談話、そして閣僚の靖国神社参拝を通じて、自民党、ひいては与党内に通底している。それをどう考えるかは投票に際しての判断材料となるだろう。

2016 年
 7 月 1 日 (金)

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