2017年1月22日(日)

【論説】トランプ米大統領就任 国際主義を主張しよう

トランプ第45代米大統領が就任した。就任演説で、米国だけのことを考える米国第一主義の政策をひたすら遂行すると宣言した。自由や民主主義、寛容といった建国以来の理念を基に世界に関与し国際秩序を築くというこれまでの米国の原則は消え去り、米国の理念が敗北したような印象だ。

就任演説が鮮明にしたのは、「恩恵を享受する支配層」対「忘れられた庶民」、「利益をむさぼる外国」対「犠牲となる米国」という敵を設定する典型的なポピュリズム(大衆迎合政治)である。しかし、米国をはじめ世界が抱える格差や異文化との衝突などグローバル化の弊害は、単純な敵対関係を設定したところで解決はできない。

貿易、経済、安全保障、外交などあらゆる分野で国際的責務に背を向け、米国第一のためには友好国と敵対してもかまわないというメッセージに、国際社会は衝撃を受けている。現代史では見たことのないような異質の米大統領の誕生である。

日本は同盟関係が弱まることも覚悟しなければならない。しかし、トランプ政権が永久に続くわけではない。その支持率は40%台とまれに見る低さで波乱が予想される。日本は大統領の発言に一喜一憂したり、こびたりせずに、国際主義の主張を掲げ続けたい。

大統領が演説で語った米産業の犠牲の末に他国が豊かになったという主張や、他国の軍を援助し他国を守る間に米軍は劣化し、自国の国境も守れない状況になった、との説明は納得できない。「物づくり、企業、雇用を奪う外国から、米国を守る」との言い方は、外国に対して極めて敵対的だ。これまでの発言から推察するに、日本もその中に入るのだが、これもおかしい。

米国が君臨した西側世界の繁栄、自由貿易システム、米軍の前方展開を受け入れた同盟国の決断、そして移民がもたらした活力で、米国自体が大きな利益を受けてきたことは歴史的な事実だ。各国は米国のために随分犠牲になってきたのだ。大統領は支持者の受けを狙い事実をゆがめている。

就任直後には、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉、不法移民阻止のための壁建設などを、正式に宣言した。これらは世界経済にも重大な影響を与える措置ばかりだ。

しかし、問題は一連の政策で、「忘れられた庶民」が豊かになり夢を実現できる生活を営むことは難しいことだ。貿易や人の流れを制御し、ツイッターで大企業を個別攻撃しても、米国でかつてのような厚みのある製造業労働層を復活させるのは無理だ。むしろ米国民は高価な製品を買わざるを得なくなる。低所得層が歓迎するオバマ前大統領の医療保険改革を撤廃するというのも矛盾する話だ。

グローバル化の弊害は一国だけでなく多国間で政策を協調し解決するのがベストだろう。自由貿易や移民流入より、人工知能(AI)など技術革新こそ今後、職を奪う恐れがあるが、それに対応する教育の充実などの施策は軽視されている。

大統領は、米国再生や格差解決に本格的に取り組むより、敵をつくり攻撃することで留飲を下げたいだけなのではないか、と疑いたくなる。ポピュリズムが世界に広がる兆候があるだけに懸念は大きい。

2017 年
 1 月 22 日 (日)

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