2018年9月19日(水)

【論説】基準地価 観光客誘致に活路を

国土交通省が発表した7月1日時点での都道府県地価(基準地価)によると、全用途の全国平均はバブル期以来27年ぶりに上昇に転じた。要因として三大都市圏や地方ブロックの中心4市(札幌、仙台、広島、福岡)の地価アップが大きい。

都市部を中心とする公示地価は2016年1月に全用途がプラスになっている。周辺部を含む基準地価が2年半後に追い付いたことは、地価の回復傾向が続くことが裏付けられたと分析できる。

ただ全国平均の地価は、住宅地がバブル期の5割、商業地は3割程度。東京特別区や名古屋市、大阪市の商業地は1〜2割台だ。今の上昇は投機目的のため全国で軒並み上がるというバブルではなく、実需のある地点がアップする地価の個別化が進んだ結果だ。

景気は12年11月を底に回復の基調にあるとされる。安倍政権の下、日銀の異次元の金融緩和が続くことで低金利、円安傾向が持続し大企業を中心に業績が好調なためだ。これを背景に雇用・所得環境が改善され、住宅地は交通が便利な地域を中心に価格が上がった。商業地でもオフィス空室率の低下など収益性の向上に加え、日本を訪れる外国人客の急増が上昇につながったと言える。

観光の状況は、17年の訪日客が2869万人と過去最多を更新。今年は8月15日に2千万人を突破、年間では3千万人を上回るペースにある。海外旅行に行ける所得層が増え世界的な旅行ブームである。この観光客をうまく呼び込むことによって、店舗やホテルなどの実需が生まれている。

この結果、観光客でにぎわう東京の銀座などは地価が上がり続け、京都市内の商業地が上昇率トップ10に名を連ねている。大阪市では関西空港に近い繁華街、ミナミの地点別価格が、JR大阪駅周辺のキタを上回った。

三大都市圏以外でも、観光・リゾート需要の高まりが地価を押し上げている。北海道のスキーリゾート、ニセコ観光圏がその典型例だ。年間の観光客数がハワイを超えた沖縄県でも上昇幅が拡大している。国際芸術祭の開催など芸術を生かした活性化で知られる香川県の直島でも、住宅地が離島では異例の上昇を記録した。

商業地などから徴収する固定資産税は、地方自治体の重要な安定財源である。地価下落を止め税収を確保する面からも、自治体は観光客の誘致に活路を求めるべきだ。

全国31道府県庁所在地で商業地の地価が前年比でプラスとなったことも注目したい。内訳は三大都市圏の8市、ブロック4市に加え、福島、新潟など19市となっている。地方圏の中心都市での地価上昇も、観光など交流人口を増やす施策が効果を上げているからだ。人口減少を食い止める防波堤としてこれら都市を生かすためにも、若者が働く場所をつくり出す観光を中心とした戦略が待たれる。

一方、災害リスクが地価に影響を与えている。静岡、愛知、三重、和歌山、高知といった南海トラフ巨大地震によって津波被害が想定される県の沿岸部では、住宅地の需要が少なく地価の下落が続いている。

災害リスクの徹底公表によって、危険性を理解して住宅を購入できるようにすることは安全のため重要だ。情報公開による地価の下落は受け入れざるを得ない。

2018 年
 9 月 19 日 (水)

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