2016年5月27日(金)

【論説】サミット経済討議 改革実行こそ日本の貢献

日本で8年ぶりとなる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)が開幕した。初日の経済分野の討議で議長の安倍晋三首相は、世界経済の持続的で力強い成長のため、先進7カ国(G7)のリーダーシップ発揮を訴えた。首脳宣言には各国の事情を踏まえた機動的な財政出動と構造改革、そして金融政策の重要性が盛り込まれる見通しである。

安倍首相は討議で、中国経済の減速や原油安により世界経済の不透明感が増していると強調。対応を誤れば危機に陥るリスクがあると指摘した。しかし議長としてこの状況認識は妥当だろうか。

中国の成長は鈍化しながらも小康状態にあり、原油相場は反転。世界経済への悲観的な見方は、年初よりも和らいでいると言えるからだ。

サミット直前の安倍首相による欧州歴訪や、仙台市でのG7財務相・中央銀行総裁会議で日本の求める財政出動に足並みがそろわなかったのも、このような各国の景気認識が背景にあった。

それにもかかわらず安倍首相が財政出動に前のめり姿勢を崩さないのは、なぜだろう。サミットで「お墨付き」を得て、消費税増税の再延期や新たな経済対策を打ち出したいためではないのか。それは当然、7月の参院選や「衆参同日選」を意識したものに違いない。

だが、サミット議長国として各国に成長強化を求めるのであれば、日本の貢献は、極めて低い成長力を高める点にこそあるはずだ。それは景気対策による一時的な好況や選挙目当ての増税先延ばしなどでなく、社会保障や税・財政の将来不安を払拭(ふっしょく)する構造改革を置いてほかにはあるまい。

日本の成長力を低下させている財政問題では、安倍首相がサミットの「宿題」に納得のいく答えを示せていない点を指摘しておきたい。

2013年6月の英ロックアーン・サミットは、先進国最悪の日本の財政を問題視し「信頼できる中期的な財政計画を定める」よう首脳宣言に明記。これに対する直近の回答といえるのが、基礎的財政収支を20年度に黒字化するとして昨年決めた財政健全化計画だが、問題はその前提である。

実質2%超の実現不能としか思えない成長が続くと想定しているためだ。内閣府の試算では、その高成長と消費税率10%への引き上げがあっても目標年度に6兆円超の赤字という。とても信頼に値しないのである。

パナマ文書により今回焦点に急浮上した課税逃れ問題では、口座情報の交換などの着実な実施が強調された。世界の注目が集まる中で踏み込み不足は否めないが、日本にとっての利点は大きい。取り組みを加速したい。

今回のサミットが世界の成長を重要テーマとしながら、世界2位の経済規模となった中国が不在なのには、違和感を覚えざるを得ない。中国、インドなど新興国の台頭により、G7だけで世界的な経済課題を話し合うことの限界が指摘されて久しい。新興国を加えた20カ国・地域(G20)の存在感が増しているためで、中国は今年、その議長国なのだ。

サミットが南シナ海問題で中国をけん制する方向となったため、招くのが難しかった面はあろう。だがアジアでのサミットであり、中国不在はかえって「G7不要論」を勢いづかせかねない。

2016 年
 5 月 27 日 (金)

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