2017年5月26日(金)

【論説】加計学園文書 疑念は一層深まった

岡山市の学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡り、文部科学省に伝えられた「総理のご意向」などが記されたとみられる一連の文書について、今年1月に天下り問題の責任を取り辞職するまで文科事務次官だった前川喜平氏が記者会見し「本物」と明らかにした。昨年秋に担当の専門教育課から説明を受けた際に示されたという。

特定の地域に限って国の規制を緩め、経済活性化につなげようという国家戦略特区制度を活用し獣医学部新設にこぎつけるまでの過程で、安倍晋三首相の友人が理事長を務める加計学園が優遇されたのではと野党は一斉に追及。民進党が問題の文書を入手し、文科省に内容の確認を迫った。

これに対し菅義偉官房長官は「怪文書」と決めつけ、松野博一文科相もわずか1日の調査で「文書の存在は確認できなかった」と発表。その後も文科省で作成されたとみられる文書などが次々と出てきたが、出どころが定かでないといった理由で確認に応じようとしない。だが加計学園が特区の事業者に選定される過程で事務方トップにいた前川氏の証言は重い。

首相やその周辺の意向により行政がゆがめられたのではないかとの疑念は一層深まり、首相が「岩盤規制の突破口を開く」と強調して手掛けた特区制度の公平性が大きく揺らいでいる。政府がこれ以上、調査と説明を拒むことは許されない。

文科省は長年にわたり獣医師が増え過ぎないよう獣医学部の新設を認めてこなかったが、安倍首相は昨年11月に制度を見直すと表明。今年1月には、愛媛県今治市に新設する獣医学部を運営する事業者に加計学園が選ばれた。問題の文書は見直し表明前の時期に、特区担当の内閣府などとのやりとりを文科省側で書き留めた形になっている。獣医学部新設に慎重な文科省に内閣府が「官邸の最高レベルが言っていること」や「総理のご意向」を示し「早期開学」を迫っていたことがうかがえる内容だった。前川氏は「文科省の専門教育課で作成され、在職中に幹部の間で共有された文書」「確実に存在していた」とした上で「押し切られてしまった責任は大きい」などと述べた。

文書のほか、昨年11月に特区の諮問会議で獣医学部の新設要件が決まる前に文科省内でやりとりされたとみられるメールの文面も明るみに出た。「加計学園から構想の現状を聴取した」などとあり、事前に学園側と連絡を取っていたとみられる。最終的に1校特例で事業者を公募、加計学園だけが手を挙げた。こうした経緯にも前川氏は言及。「国家戦略特区の議論の対象は加計学園だと認識していた」とし、加計学園ありきだったかとの問いには「関係者の暗黙の共通理解としてあった」と語った。

前川氏の証言について聞かれ、菅官房長官は「天下り問題を隠蔽(いんぺい)した文科省の事務方の責任者で、批判にさらされて辞任した人だ」と述べた。森友学園問題でも、政府は真相解明を脇に置いて疑惑の否定を重ね、籠池泰典前理事長による一連の証言の信ぴょう性を問題にするばかりだった。

財務省は学園側との交渉記録は破棄したと詳しい説明を避け、調査も拒んだ。今度は複数の文書が出てきたが、文科省は存在を確認できないと言う。その繰り返しに国民はうんざりしている。

2017 年
 5 月 26 日 (金)

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