2019年1月18日(金)

【論説】沖縄県と国の対決 情報開示が不可欠だ

沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設を巡る県と国との対決は今年も収まりそうにない。国の情報提供や、名護市辺野古移設の賛否を問う県民投票を巡っては、地方自治そして民主主義の在り方も問われる。政府、与野党の対応次第では、4月の統一地方選、ひいては夏の参院選への影響も否定できない。

政府は昨年12月、普天間の移設先・辺野古沿岸部の埋め立てを本格化。護岸で囲まれた水域は1カ月で約2割が土砂で埋まった。

玉城デニー知事は来月24日に予定される県民投票で、辺野古移設の賛否を問い、国と対峙(たいじ)する構えだが、知事と距離を置く5市長は投票への不参加を表明。埋め立ての阻止のためには、県は再度、国との法廷闘争も辞さない構えも見せている。

年明け早々、象徴的な出来事があった。昨年から土砂投入が始まった辺野古沿岸部での環境保全を巡り、安倍晋三首相は6日のNHK番組で「あそこのサンゴは移植している」と述べた。玉城知事はツイッターで、実際の土砂投入場所で移植は行われていないとして事実誤認を指摘。首相官邸サイドは全体として保全がされているとの趣旨だったと抗弁しているが、沖縄軽視とも受け取られかねない不用意な一言だったのは間違いない。

玉城氏が政権に不信感を募らせる背景には、政府がこれまで県に示してきた工期や費用を巡る疑問がある。原因は、現在の工区とは別の海底にあるとされる軟弱な地盤。「マヨネーズ状」と指摘する専門家もいる。埋め立てには、当初計画にはなかった大規模な地盤改良工事が必要となり工期、費用は跳ね上がる。

防衛省が「少なくとも3500億円以上」としてきた工費は、新たな県の試算では最大で2兆5500億円に上る。工期は当初計画の5年が13年に延びる。莫大(ばくだい)な税金が追加されるのかどうか。県は政府にただしているが明確な回答はない。通常国会では野党が追及してしかるべき問題だろう。

来月の県民投票の設問は、1997年12月、辺野古の地元で実施された「名護市民投票」の反省に立ったと見ることが可能だ。名護市では市民らが当初「賛成」「反対」の2択を問うべきだとしたが、市長(当時)の提案に基づく修正により、条件付き賛否も加えた4択で実施され、反対が過半数の54%だったが賛成も46%(条件なしの「賛成」は8%)に上った。直後、市長は辺野古移設受け入れを表明した。

今回、投票条例を議決した県議会では、自民、公明両党は賛否の2択に「やむを得ない」「どちらとも言えない」の選択肢も加えるとの修正案を提出したが否決された。反対が鮮明になれば政権にダメージを与えるのは間違いない。

投票への不参加を表明しているのは、宮古島、宜野湾、沖縄、石垣、うるまの5市長。いずれも政権と近く、故翁長雄志(おながたけし)前知事や玉城知事とは距離を置いてきた。不参加は投票が知事の後押しをすることを警戒しての判断だろう。

5市の有権者は計約36万人、全県約116万人の3割超だ。これほど多数の投票権が行使できないのは、地方自治そして民主主義の観点からみて問題ではないか。全市町村の参加が望まれる。加えて公平公正な投票のためには、工事に関する正確な情報開示が不可欠だ。

2019 年
 1 月 18 日 (金)

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