【論説】野党の課題 「漁夫の利」与えぬ決断を

4月の衆院3補選に全勝したからといって、次期衆院選の勝利が約束されたわけではない。立憲民主党が野党第1党として、自民、公明両党を過半数割れに追い込み、政権交代に道筋を付けるためには、克服しなければならない課題は多く、もう一段の努力が必要だ。

今回の補選結果は、あくまでも裏金事件という自民の「敵失」によるところが大きい。立民の党勢が拡大したとみるのは早計で、全国規模の戦いとなれば、野党間の連携など大胆な戦略の構築が不可欠となる。

言うまでもなく、衆院選の勝敗の鍵を握るのは、289ある小選挙区の戦いだ。強固な組織票を武器にする自公両党に対抗する上で、野党が乱立してしまえば、政権批判票が分散して、与党に「漁夫の利」をさらわれるのは自明の理だろう。

現時点で決まっている衆院小選挙区の候補は、立憲民主178人、日本維新の会155人、国民民主党32人、共産党140人で、都市部で競合するケースが目立つ。各党に感情的なしこりが横たわり、候補者調整は至難の業だ。

野党勢にとって苦い経験がある。自民、立民、国民民主、維新、共産の各党がそれぞれ擁立した昨年4月の衆院千葉5区補選だ。野党4党の候補の得票を合算すると、自民候補の2倍以上に達していながら、共倒れに終わった。

こうした中、維新が先の党大会で、次の衆院選の目標として、従来の野党第1党獲得に加え、与党過半数割れを目指す活動方針を採択し、注目された。維新の創設者の橋下徹元大阪市長は候補者乱立を避けるよう野党候補の一本化に向けた予備選の実施を説く。

ただ、馬場伸幸代表は今回4月の補選2選挙区で立民と対決した事情もあり、「立民をたたきつぶす」と公言、敵意をむき出しにする。しかし、政治とカネの不祥事で政治への信頼を失墜させた自民党政治を目の当たりにしているいま、野党のリーダーたちは大局的な見地に立ち、何を優先すべきか真剣に追求する局面ではないか。

自民がこれだけの政治不信を招きながら、自浄作用を発揮できないのは、長年続く「1強」のおごりが背景にある。政治に緊張感をもたらすには、強い野党の存在が欠かせず、いがみ合っている場合ではない。

もちろん、各党が財源に裏打ちされた現実的な内政、外交・安全保障政策を磨くことが大前提だ。その上で、後半国会最大の争点となる政治改革では、自民との安易な妥協を慎まなければならない。政策活動費や、調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費)の使途公開も含め、政治資金制度の透明化に向けた抜本改革で足並みをそろえ、自民に実現を迫ることが野党の使命である。

共同通信の4月の電話世論調査によると、望ましい衆院選結果について、与野党伯仲を求める回答が50・5%、与野党逆転も23・8%に上る。この「民意」を踏まえた決断を求めたい。

描く政権像が異なったとしても、まず与党の議席を大幅に減らさなければ、いまの政治は変わらない。野党はそのための戦い方に知恵を絞るときだ。政治改革など共通する政策の実現を旗印に、確執を乗り越え、競合選挙区を可能な限り減らしていく「度量」を見せるべきだろう。