【論説】皇位継承問題 次の一歩へ議論加速を

政府の有識者会議が2021年末に提言した皇族数確保策について、自民党は妥当とする党見解をまとめた。各党の意見が出そろい、大型連休明けに本格化する政党間協議で、①女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持して公務を担う②旧皇族の男系男子が現皇族との養子縁組により皇族に復帰する-の2案を軸に制度化の議論が交わされる。

天皇だった上皇さまが退位の意向を示されたのを受けて17年6月、退位特例法が成立。衆参両院は付帯決議で、女性皇族が結婚後も皇室にとどまり、当主となる「女性宮家」の創設をはじめ、「安定的な皇位継承」を確保するための課題を速やかに検討し、国会に報告するよう政府に求めた。

しかし有識者会議は「機が熟していない」として、自民党の保守派を中心に「女系天皇」につながりかねないと根強い反対がある女性宮家を検討テーマから外した。各党とも皇族数確保が差し迫った課題との認識で一致しているが、2案が皇室典範改正などに結び付いたとしても、それは一時しのぎにしかならない。

公務の担い手は増えても、天皇陛下より若い世代の皇族で皇位継承資格を持つ男子は、秋篠宮さまの長男悠仁さまだけという事実は変わらない。女性宮家を創設して女性皇族に皇位継承を認めるかどうか、次の一歩に向け議論を加速させることが求められる。

皇室典範は女性皇族が一般男性と結婚したときは皇族の身分を離れると定める。現在、未婚の皇族は6人。悠仁さま以外の5人全員が女性で、結婚が相次げば皇室活動は先細りし、国民との触れ合いにも影響しよう。

2案を巡り、自民党は「結婚後も皇族の身分を保持する女性皇族の配偶者や子は皇族としない」「養子になり皇族に復帰した本人に皇位継承資格は認めず、生まれた男子に認める」と提案。日本維新の会は身分保持案で「皇位継承資格が女系に拡大する懸念」に十分留意するよう求めている。

立憲民主党は皇族復帰案で「対象者の意思確認が必要」などと指摘。併せて女性宮家の創設を議論すべきだと訴える。

皇族数確保策に決定的な意見の違いはなく、調整を急がなくてはならない。問題はその次だ。

05年に小泉純一郎首相の下で有識者会議は、典範で男系男子に限られている皇位継承資格を、女性とその子(女系)に拡大し、女性宮家を創設するよう求める報告書を提出。悠仁さま誕生で法改正は見送られたが、12年になり、当時の民主党政権が女性宮家を柱とする論点整理を公表した。

だが父方が天皇の血を引く男系継承を重視する安倍晋三元首相の政権復帰で女性宮家の議論は停滞。その安倍氏が唱えたのが、今回と同じ皇族復帰案だった。ただ戦後に皇室を離れて70年以上もたつ旧宮家から男系男子を皇族に迎えることに国民の理解を得られるかなどの疑問があり、議論が生煮えのまま放置されてきた。

歴史上、女性天皇は8人いる。いずれも男系で、母方だけが天皇の血筋にある女系天皇はいない。伝統を重んじるのは分かる。共同通信の世論調査では女性天皇支持が若年層を中心に9割に達している。女系天皇の可能性にとらわれるあまり、象徴天皇制の根幹に関わる皇位継承策を先送りするようなら、無責任のそしりを免れない。