2020年4月6日(月)

【論説】同一労働同一賃金 格差是正の実効上げよ

非正規雇用労働者と正社員の不合理な待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」が4月から大企業と派遣会社に義務づけられた。中小企業は1年遅れで来年4月の開始だ。

この制度は、合理的か不合理かの線引きが難しく、非正規の待遇改善の実効が上がるか見通せないのが難点だ。企業の真摯(しんし)な取り組みは言うまでもなく、労働組合側も組合員が少ない非正規労働者への適切な対応を求め、労使双方で改革の趣旨実現に努めてほしい。

同一労働同一賃金は、安倍政権が取り組んできた「1億総活躍社会」「働き方改革」といった政策の中で打ち出された。二つの側面がある。正社員と非正規労働者の賃金格差是正を目指す社会政策であり、非正規の賃金を上げて個人消費増加などの好循環につなげる経済政策でもある。

背景にあるのはパートや派遣社員など非正規労働者の増加だ。正社員の6割程度の賃金水準にある非正規は今や雇用者の約4割を占める。主婦のパートに加え、世帯主が非正規という例が増え、65歳以上でも非正規で働き続けるのが当たり前となった。人手不足を補う外国人労働者の受け入れ拡大も課題になっている。

これらの人たちの処遇を改善し、経済と社会保障の底上げを図る政策の目玉として浮上したのが同一労働同一賃金だ。正社員と仕事内容、責任、人事異動などの範囲が同じなら、賃金、休暇、福利厚生などで同じ待遇にしなければならない。たとえば基本給は能力、経験、成果が同じなら同じにする必要がある。違いがあっても不合理な格差は禁止だ。労働者から格差の説明を求められた場合、企業は理由を説明しなければならない。

ただ同一労働同一賃金は日本に定着しにくいと指摘されてきた。あらかじめ職務を明確にして採用、処遇する「ジョブ型雇用」「職務給」が一般的な欧米と違い、日本型雇用は新卒一括採用後に転勤や配置換えを経て、社内で能力や経験を評価され昇給する「職能給」「勤続給」が軸だからだ。

そのため新制度は日本の風土に合わせて、職務給を押しつけず、職能給、成果給、勤続給などの賃金形態でも不合理でなければ適法とした。これにより仕組みが複雑で明快なルールができにくく、実際の運用は企業側の判断に左右される面が強くなったと言える。

非正規労働者の処遇を改善するために正社員の基本給や賞与を減らすケースや、非正規にこれまでなかった賞与を支給するため毎月の給与は減らすなどのケースが懸念される。あるいは負担増を嫌って非正規の雇い止めなども起こりかねない。これらは格差是正、経済の好循環という改革の趣旨とは正反対であり、避ける必要がある。政府は導入後のフォローアップも怠らないでほしい。また退職金や定年後の継続雇用の格差是正には政府も明確な指針を示しておらず、企業と労働者が対立した場合、最後は裁判で司法に判断を委ねることになり真の待遇改善が遠いのも問題点だ。

新型コロナウイルスで先行きに暗雲が漂うが、日本の企業には463兆円の内部留保もある。人件費の負担増は当然予想されるが、処遇改善により非正規労働者の働きがいを高め生産性を引き上げることによって、そのコストを上回る成果を挙げていってほしい。それこそが改革の本旨だ。

2020 年
 4 月 6 日 (月)

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