2019年6月19日(水)

【論説】高齢者向け新免許 きめ細かい制度設計を

高齢ドライバー向けに新たな運転免許制度が創設される。対象は免許更新時に認知機能検査が必要な75歳以上。関係法令を改正し、自動ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置といった安全機能を備えた車種のみを運転できる新免許をつくる。今持っている免許と取り換えるかどうかは本人が選べるようにする方向という。

東京・池袋で4月、87歳男性の運転する車が猛スピードで横断歩道に突っ込み、母子が亡くなり、8人が重軽傷を負うなど、高齢者の暴走事故が後を絶たない。政府は新制度創設を近く閣議決定する成長戦略に盛り込み、警察庁や国土交通省などが専門家も交え、制度設計の詳細を詰める。

衰えを自覚して免許証を自主返納する人が年々増える一方で、公共交通機関が充実していない地方で日々の買い物や通院のために免許を手放せない人や、運転が生きがいという人もいる。新免許導入で、そうした人たちの選択肢は増える。ただ安全機能も万全ではなく、悪天候などで装置が作動しないこともある。

海外には運転の時間帯や場所、速度などを限定する免許もある。例えば、ラッシュ時の運転を禁じたり、自宅から一定の距離以上行けないようにしたりする。安全機能に加え、こうした限定条件も取り入れ、選択肢を増やしながら安全性を高めていく、きめ細かい制度設計が求められよう。

75歳以上の免許保有者は2018年末の時点で約563万人。この年、75歳以上のドライバーが最も過失の重い「第1当事者」となった交通死亡事故は前年を42件上回る460件を数えた。75歳未満も含めた全3099件の14・8%を占め、割合として過去最高を記録した。他方、75歳以上の免許返納者は約29万2千人で、過去最多だった。

返納制度は1998年に始まった。さらに17年3月施行の改正道交法で75歳以上について、免許更新時に記憶力や判断力を調べる認知機能検査が強化された。認知症の恐れがあると判定された場合には医師の診断が義務化され、認知症と診断されると、免許取り消しや停止の行政処分を受ける。施行後1年間に1万6470人が医師の診断を受け、1892人が取り消しや停止となった。

だが、さまざまな事情から返納しない人や、池袋・母子死亡事故の87歳男性のように検査をパスしても事故を起こす人は多い。さらなる対策が必要として、安全機能を備えた「安全運転サポート車」のみを運転できる「限定条件付き免許」の導入の検討が本格化した。

安全機能には、車載レーダーやカメラで前方の車や歩行者を検知して作動する自動ブレーキや、前後に壁や車がある状態でアクセルを踏み込んだ場合に急加速を防止するペダル踏み間違い時加速抑制装置などがある。

この二つの機能は20年末までに、ほぼ全ての車種に標準装備かオプション設定される見通しとなっている。一定の効果は期待できるが、自動ブレーキ用のカメラは夜間や悪天候時に検知が困難になるなどの問題点もあり、運転の時間帯や場所などの限定条件を組み合わせることを考えたい。

返納と同様に新免許に切り替えるかどうかは本人が決めることだが、家族やかかりつけ医、ケアマネジャーら周囲の目配りと説得が欠かせないのは言うまでもない。

2019 年
 6 月 20 日 (木)

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