2020年2月23日(日)

【論説】千葉小4虐待死裁判 虐待根絶の手掛かりに

千葉県野田市立小4年、栗原心愛さんの虐待死事件で傷害致死などの罪に問われた父勇一郎被告は千葉地裁の裁判員裁判初公判で「娘にしてきたことはしつけの範囲を超える。深く反省している」と述べた。一方で、衰弱させたり、冷水シャワーを掛けたりしたとされる起訴内容の一部を否認した。今後、動機や死亡の経緯が焦点となる。

心愛さんが亡くなって1年余りが過ぎた。親による子どもへの体罰禁止や児童相談所の体制強化などを盛り込んだ改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が昨年6月に成立。今年4月の施行に向け厚生労働省の有識者検討会は今月、どのような行為が体罰に当たるかを示した指針をまとめた。

勇一郎被告ら虐待の疑いで警察の調べなどを受けた親の多くが「しつけ」と主張したことが背景にある。さらに国は児相を設置する自治体への財政支援を拡充することを決めた。児相で児童の面談や保護者の指導などに当たる専門職の児童福祉司を2022年度までに、現在の1.5倍近い5260人程度にまで増やし、処遇改善も図る。

しかし、その間も虐待は増え続けている。野田市の検証などで事件の事実関係は詳しく明らかになっているが、裁判では被告が自らの言葉で事件を語る。それを基に心愛さんが亡くなるまでの心の動きなどを丹念にたどり一つでも多く虐待根絶の手掛かりを得たい。

勇一郎被告は昨年1月22日から、心愛さんに食事や十分な睡眠を取らせず、浴室に立たせ続けたり冷水シャワーを掛けたりし、衰弱させて2日後に死なせたとして起訴された。母親は暴行を制止しなかったとして傷害ほう助罪に問われ、昨年7月に懲役2年6月、保護観察付きの執行猶予5年の判決が確定。被告から暴力を受け、逆らうのが難しかったとされる。

虐待は17年8月には始まっていたとみられ、心愛さんは学校に救いを求めた。その年11月、学校のアンケートで被告の暴力を訴え、児相に一時保護された。そこで「夜中にパパに起こされ、急にズボンを下ろされた」と告白。医師は心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断した。ところが年末、児相は一時保護を解除し、心愛さんは被告の実家に身を寄せた。

被告は心愛さんに「たたかれたのはうそ」との書面を書かせ、児相職員に実家から連れて帰ると迫り、児相は18年2月末に帰宅を認めた。その後、心愛さんは9月、母親との外出時に「帰りたくない」と話し、再び被告の実家に預けられたが、年末に連れ戻された。

そのさなかの10月、学校で「未来のあなたを見たいです。あきらめないで下さい」などと自分宛ての手紙を書いていた。野田市が公表した専門家の検証報告書は、一時保護解除の決定時など少なくとも13回、行政機関が命を救うため介入すべきタイミングがあったとし、連携不足や危機感の欠如などを指摘している。

警察庁によると、昨年1年間に全国の警察が虐待の疑いで児相に通告した子どもは9万7842人、摘発した虐待事件は1957件に上り、いずれも過去最多だった。国は深刻な事件が起きるたびに対策を講じてきたが、神戸市では真夜中に児相を頼った小6女児が追い返されるなど、安全網にほころびも見える。常に点検を怠らず、万全を期す必要がある。

2020 年
 2 月 24 日 (月)

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