【論説】消防団員、県内も減少 担い手確保へ関心喚起を

消防団員の減少に歯止めがかからない。県内の団員数は昨年4月1日現在合わせて2万300人。前年に比べ693人減った。消防団は今年1月の能登半島地震でも住民の避難誘導などに活躍するなど大規模災害の初動対応には欠かせない。地域の防災力を維持していくためにも消防団活動への理解と関心が求められている。

消防団員は自身の仕事の傍ら、火災や災害発生時に消火活動や住民の避難誘導などに当たる。全ての市町村に設置されている。

団員数は1955年ごろは全国で約200万人に上ったが、消防庁のまとめでは昨年4月現在で約76万人。県内の団員数もかつては計10万人を超えていたが、年々減り続け、今や最盛期の5分の1。定員不足の消防団も多く、県内の団員数は昨年4月現在、条例で定める本来の定数より計3331人少なかった。団員の高齢化も進み、県内の平均年齢は85年当時の33歳に対し近年は40歳に達する。

消防団に求められる役割は様変わりしている。かつては火災現場の中心役だったが、70年代には大半の市町村に常設の消防本部・消防署が整備されたため、消火活動では消防署員の補助役に回ることが多い。代わって近年期待されているのが大規模災害時の住民救助や避難誘導。きっかけは阪神淡路大震災(95年)。多数の住民が倒壊家屋の下敷きになり、消防署が対応できなくなる中、住民でつくる消防団が地元事情に通じた強みを生かしけが人を自主的に救助した。東日本大震災(2011年)では津波避難の最前線で活躍。先の能登半島地震でも存在感を見せつけた。これを踏まえ、松本剛明総務相は去る2月、消防団員のなり手確保に全力を挙げるよう全国の自治体に通知した。

ただ、消防団員の確保は一朝一夕にはいかない。人口減少に加え、農家や自営業者に代わってサラリーマンが増え、地元意識も一般に希薄化しているためだ。

消防団の間では近年、消防団員としての活動を個人の事情に合わせて限定する「機能別団員」の導入の動きが広がる。24時間対応が基本の一般団員に比べ入団のハードルが下がり、団員確保と消防団としての対応力向上を図る工夫だ。県内では大子町が05年度に導入したのを皮切りに昨年4月現在、計18市町で導入。このうち、土浦市消防団には災害時に日本語の不自由な外国人との通訳を担う「通訳隊」、大子町には避難所運営のサポート隊が発足している。

団員の処遇改善も進められている。団員の報酬額は市町村間でばらつきがあるが、消防庁は年額報酬3万6500円超、出動1日当たり8000円超との「基準」を21年に明示。昨年4月現在の調査によれば、本県も44市町村のうち年額報酬は28市町村、出動報酬は31市町村で基準を満たした。

新規団員が集まらない背景には、消防団の存在や活動が知られていない事情も大きい。県は消防団の活動ややりがいの紹介に力を入れる。県内のプロスポーツチームのホームゲーム会場にPRブースを出展したり、大学内でイベントを活用してPRする予定。

震災や水害の被災地には近年、多数のボランティアが駆け付ける。被災者や地域の役に立ちたいと思っている人は少なくない。こうした意欲ある人々をアイデアと工夫で掘り起こし、地元消防団の育成につなげていきたい。