【論説】中ロ首脳会談 紛争解決に本気度示せ

ロシアのプーチン大統領が通算5期目に入った後の初外遊で中国を訪問し、習近平国家主席と会談を行った。

ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中で、中国が一方の当事者を招いての首脳会談である。「新時代の全面戦略協力パートナーシップ関係」の深化に向けた共同声明に署名したが、10項目の中でウクライナ侵攻についてはごく短く触れているだけで、解決へ糸口は見えなかった。これでは到底中国は国際社会からの信用を得られない。

共同声明は「(中ロ)双方は対話がウクライナ危機解決のよい方法だと強調した」というが、外交を放棄し国際法に違反する戦争を仕掛けたのはロシア自身である。しかもプーチン氏はウクライナ侵攻で国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪容疑で逮捕状を出され、国際的に孤立している。

赤じゅうたんを敷いての中国の歓待はプーチン政権にお墨付きを与えるもので、疑問が拭えない。

中国は侵攻以来ロシア寄りの姿勢が批判される中、侵攻1年の昨年2月、ウクライナ危機に関する中国の立場とする文書を発表。各国の主権尊重や停戦、和平交渉の開始などを呼びかけた。しかしロシア軍の撤退や停戦の形が示されておらず、和平案といえる代物ではなかった。それから1年以上が経過し、この間、中国は複数回、特使を当事国や周辺国に派遣、落としどころを探った形跡はある。水面下ではロシア軍の撤退を中国案として示したともいわれる。

一方で、中国はロシア産の原油を大量購入するなどしてロシアの戦費を支え、軍事転用可能な物資をロシアに輸出している疑いもあり、国際社会の批判は強まった。

中ロ首脳会談を前に習氏は欧州を訪問し、フランスのマクロン大統領に「軍事物資はロシアに輸出しない」と明言した。開戦当初に比べ、ロシアに対して距離を置き始めたようにも見える。

4月に北京大の教授が英誌に「ロシアの将来的な敗北は避けられない」と断じる論文を発表するなど、国内にも中国の対ロ政策に疑問の声がくすぶる。

中国はウクライナと1992年に国交樹立して以来、ロシアが出し渋る空母や戦闘機の技術を供与されるなど良好な関係を築いてきた。「主権と領土の尊重」は中国の外交上の基本原則であり、2014年のロシアによるクリミア併合も公に認めているわけではない。

本来ならロシアの侵攻を国連憲章違反と非難するのが筋なのに、それをしないのは米国との対抗上、ロシアと共闘が必要だからだ。大国間のパワーゲームのためにウクライナを犠牲にしている。

ウクライナが核兵器を放棄した際には高く評価し、13年にはウクライナが核兵器による侵略の脅威を受けた場合は相応の安全保障を供与すると約束した。それであれば核兵器使用を示唆するプーチン氏を制する責任が中国にはあろう。

共同声明は米国を名指し批判し、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の重要性を強調した。しかし中国がウクライナに誠意を見せなければ、グローバルサウスの信用も得られない。

中国はウクライナや国際社会の期待に応えるよう紛争解決へ公平な努力をすべきだ。でなければ仲介努力は見せかけだけと言われても仕方ない。