【論説】ガソリン補助金 「賢い支援」に転換急げ

ガソリン補助金の出口が見えない。4月末に期限を迎えるが、政府は7度目の延長を決めた。

だがガソリン、灯油の価格を抑えるために投じた補助金は6兆円を超えている。持続可能性や効率の面から疑問が生じるのは当然だろう。所得、地域、業種にかかわらず一律に支援する方式から早く転換すべきだ。

原油高は続いているが、財政資金は無尽蔵ではない。低所得世帯や過疎地に支援対象を絞り込んでほしい。生活を支える補助金だからこそ、効率的で長続きする「賢い支援」に切り替えねばならない。

ガソリンなどの燃油価格を抑えるため、補助金が導入されたのが2022年1月のことだ。原油の国際市況が値上がりしたためで3月末までの時限措置のはずだった。しかし2月にロシアのウクライナ侵攻が始まり、資源価格は一層高騰した。

ロシアのエネルギー資源を利用できなくなり、原油や天然ガスは中東、米国、オーストラリアなどからの調達に変更してきたが、円安や中東情勢の悪化の影響もあり、原油価格は依然高い。

補助金は石油元売りに渡し、店頭の値段を一定水準に抑える仕組みだ。最近のガソリンの小売価格は175円程度だが、補助金がなければ200円近くになるという。

生活に直結する補助金は導入よりも打ち切るタイミングが難しい。消費者にとっては負担増になってしまうからだ。縮小や廃止のタイミングをあらかじめ検討しておくべきだという意見は、導入前から政府内にもくすぶっていた。

だが政府はいたずらに期限延長を繰り返してきた。ガソリン補助金は特定の業種や所得層に対象を限らない支援だけに影響も大きい。内閣支持率や選挙をめぐる思惑が働いたのだろうか。

運送業の大半は中小企業であり、公共交通機関が少ない地域では家庭も車に頼らざるを得ない。ガソリン補助金は暮らしを支えてきた面がある。

政府は5月の使用分を最後に、電気・ガス代への補助金を打ち切る。液化天然ガス(LNG)などの価格が落ち着いたためだという。ガソリン補助金も縮小や廃止の方向をできるだけ早く決め、車のユーザーや家庭に周知してほしい。

見直しの基本は補助金の支援対象を農漁業や物流・運輸などに限定することだ。車に頼らざるを得ない地域と、交通網が張り巡らされた都市部で差があるのも当然だろう。灯油は寒冷地への支援に絞ったらどうか。零細企業や低所得層への配慮は欠かせないが、高級車に乗る富裕層には不要だ。

業種の選定や所得による絞り込みの仕組みをつくるのに時間がかかるなら、一律支援の目安となるガソリン価格の水準を引き上げる移行措置を考えてほしい。補助金の規模を圧縮できるはずだ。

補助金を漫然と続ければ、省エネやエコカーへの乗り換えに弾みがつかず、結果的に化石燃料への依存が続く負の効果を生みかねない。直接の恩恵が車のユーザーに限られる補助金を見直し、省エネや脱炭素を加速させる政策に財源を振り向けるべきではないか。

エネルギー分野以外にも子育て、教育、奨学金など政府の手助けが必要な分野は多い。ガソリンの巨額補助金の見直しは、財政資金の公平で有効な使い道を考えることにほかならない。