歴史小説「恋歌」、歌子の思い琵琶歌に 長須与佳さん(那珂出身)が再現
直木賞受賞の歴史小説「恋歌(れんか)」の主人公、中島歌子の思いを描いた琵琶歌を、那珂市出身の琵琶・尺八奏者の長須与佳(ともか)さんが再現した。15日に同市額田南郷の阿弥陀寺で開かれた「水戸藩士の妻、中島歌子」講演会(那珂歴史同好会主催)で新たに曲を付けて披露した。2回行われた同会には約230人が参加、歌子の生きざまに思いをはせていた。
同会では、県立歴史館の首席研究員、笹目礼子さんが、新聞記事や歌集を通して歌子の人間像を紹介。続いて、長須さんが「萩の舎中島歌子刀自琵琶歌」を演奏した。
琵琶歌は、歌子没後20年に当たって、弟子の三宅花圃(かほ)が作詞し、雑誌「女性日本人」1923(大正12)年5月号に掲載した。
その歌は、1860(安政7)年の「桜田門外の変」の際、事件発生を聞いて、夫となる水戸藩士・林忠左衛門が襲撃に加わっていたのではないかと、歌子が現場に駆け付けた時の状況で、林の姿を探し求めるうちに、襲撃に参加していた知人が負傷のために息を引き取る場面に遭遇した経験を描いている。
演奏した長須さんは「音源が残っていない中からスタート。ドキドキしたが、演奏後に拍手をもらい、心の荷が下りた」とほっとしながら、「今後もこの琵琶歌を歌っていきたい」と話していた。
参加していた同市菅谷の杉浦日出子さん(77)は「魂が揺さぶられる歌だった。当時、迫害に遭いながらも生き延びた女性の力強さを感じた」と感想を話していた。 (武藤秀明)