茨城町・石崎小 凪沙ちゃん 心の中に
茨城町立石崎小の卒業式が20日、同町中石崎の同小体育館で行われ、2009年10月、登校途中の交通事故で亡くなった当時同小1年の中村凪沙(なぎさ)ちゃん(6)にも卒業証書が授与された。卒業生たちの凪沙ちゃんへの思いがこもった証書が、遺影を手にした父正弘さん(50)に手渡された。
卒業生席には、凪沙ちゃんの席が設けられ、ピースサインをしてほほ笑む写真が置かれた。凪沙ちゃんは入学から半年後の09年10月27日、自転車で登校中にトラックにはねられて亡くなった。
卒業生39人が次々に証書を受け取った後、「中村凪沙さん」と呼ばれた。正弘さんが返事をして壇上に上がった。3姉妹の末っ子だった凪沙ちゃん。この日は一番上の姉香澄さん(19)も出席した。
「ずっと見守ってくれてありがとう。みんなの心の中で共に過ごし小学校の全課程を修了したことを証する」
西田弘子校長(59)は証書を読み上げ、遺影を手にした正弘さんに手渡した。
「凪沙ちゃんと一緒に卒業したい」という同級生の思いを同校がくみ取り、卒業生番号のない証書を贈ることを決めた。
証書を受け取った正弘さんは「今も凪沙を同じ仲間と思ってくれるのがうれしい。凪沙も皆と卒業できて喜んでいるはず」と話した。
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事故後、正弘さんは悲劇を繰り返さないために、通学路の安全対策に奔走してきた。交通安全協会に入会し、立哨活動などに取り組んでいる。
中学生には自転車通学用のたすき掛け、小学生には徒歩通学時のヘルメット着用を、それぞれ町に要望して全校での導入が実現した。事故現場近くには信号機が設置され、歩道を確保する工事も進められている。
正弘さんは「通学路の安全のために、なぎ(凪沙ちゃんの愛称)がやったことなのかもしれない」と感じている。
一方で、県内では昨年4月にも神栖市内で小学2年の男児がトレーラーにはねられて死亡する事故が発生するなど、子どもが犠牲になる事故は後を絶たない。
正弘さんは「犠牲になるのは弱者の子ども。ハンドルを握るドライバーの安全意識を向上させなければ、事故はなくならない」と訴える。 (斉藤明成)