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囲碁将棋 盤に匠の技 神栖の茨城木工

ろうを塗って将棋盤につやを出す茨城木工の職人=神栖市矢田部
ろうを塗って将棋盤につやを出す茨城木工の職人=神栖市矢田部


日本の伝統文化として継承されてきた囲碁や将棋の普及促進を目指し、神栖市矢田部の「茨城木工」(泉謙二郎社長)は半世紀以上、碁盤や将棋盤の製作を続けている。同社は年間約15〜20万枚を生産し、全国生産量の8割超を占める。日本のもの作りを次世代に継承し、国内外に発信していきたいと願う職人12人による“匠(たくみ)の技”が盤作りを支える。


同社は1956年、太平洋に面した漁業のまち、同市で創業した。当初は特産のハマグリの殻を使った白碁石の製造販売を行っていたが、ハマグリの漁獲量減少などを理由として事業転換を決意、60年代に本格的に碁盤や将棋盤の生産に乗り出した。

手掛けるのは顧客ニーズに合わせ、数百万円もする工芸品のような高級品から、大衆向けのものまでさまざま。主力は折り畳み式の盤だ。

泉社長は「盤は囲碁も将棋も使う人あってこそのもの。日常生活の中で気軽に楽しんでもらうには高級盤に特化するより、二つ折りの普及盤を広め、競技人口を増やしたかった」と振り返る。

最盛期の70〜80年代には、足付き盤や二つ折りの普及盤などで年間約35万枚の出荷量を誇ったという。現在は需要が減ったものの、それでも国内シェアで8割以上を堅持し、トップを走り続ける。

盤には北海道産のカツラやカヤ、東南アジア産のアガチスなどを使用。十分に乾燥させないとカビが生えたり、割れ目が出たり、木が反ったりする。このため、丸太から製材した木材は3年以上しっかりと乾燥させた後、初めて同社の工場に運び込まれる。

規格に合うようにカットし、盤に色を塗り、真っすぐな目盛りを入れ、仕上げにろうを塗ってつやを出す。一部の工程を除いて、ほとんどが熟練の職人による匠の技で、一つずつ丁寧に作り上げられる。

自ら職人の一人として盤作りする泉社長は「同じ木材は一つとしてない。目盛りを入れて命を吹き込む瞬間が何ともいえない」と、もの作りの喜びを口にする。

和食など日本の文化が海外で評価を受け、国内でもあらためて価値が見直しされる動きがある。同社は、囲碁や将棋にも光が当たることを願う。

泉社長は「囲碁や将棋は思考力を養うのに適しており、対面での勝負の醍醐味(だいごみ)を味わってほしい。私たちも伝統の灯を絶やさないようにこれからも生産を続けていきたい」と話している。 (松崎亘、写真は菊地克仁)

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