被災の「懐古館」 芸術家が「刀傷の柱」再生 ひたちなか
東日本大震災で被災し取り壊した、ふるさと懐古館(ひたちなか市湊本町)の「刀傷のある柱」が芸術作品としてよみがえり、ひたちなか海浜鉄道那珂湊駅に設置されることになった。地域に現代アートを飾って、にぎわいを創出する地域活性化イベント「みなとメディアミュージアム(MMM2015)」(同実行委主催)の一環で、作家が9〜30日の会期中に作品を仕上げる。
制作するのは、東京都在住のアーティスト、田中彰(しょう)さん(26)。自ら取材した那珂湊の現在や歴史的な街並みを高さ約4メートルの柱の表面に、絵筆ではなく電熱ペンでレリーフ状に焦がして描くという。
ふるさと懐古館は、江戸時代の豪商・木内家の倉庫を活用したもので、幕末、天狗(てんぐ)党の乱のときについたといわれる刀傷のある柱が現存していたが、東日本大震災で被災してしまった。刀傷の部分は切り取り、市教委が保存している。
田中さんは「歴史的にも価値のある柱を美術作品として再生し駅に立てることで、町・駅・人をつなぐことができる」と考え、今イベントに出品することにした。柱を見て、直感的に町にあるものを認識できる地図のような作品を狙っているという。
柱は3日夜、田中さんや実行委関係者らが見守る中、重機を使って駅の構内に据え付けられた。作品は会期後も同駅に設置される。
黒沢正人駅長は「どんな芸術作品に仕上がるのか、楽しみ。大勢の乗客に来てもらい、アートによみがえった柱を見てもらえたら」と期待を込めた。