「水没文書」を救え 常総市 修復技術学ぶ研修会
鬼怒川決壊などで公文書が浸水被害を受けた教訓を生かそうと、常総市役所で7日、水に漬かった文書の修復技術を学ぶ研修会が開かれた。東日本大震災で本格的に確立された「洗う」技法。県内外の自治体職員や市民ら約30人が参加し、「初体験」「本物の史料なので緊張する」と話しながら、「水没文書」の救出法を学んだ。
同市では、本庁舎脇の建物1階に保管していた永久保存指定の行政文書約2万5千点が被災した。合併前の10市町村から引き継いだ江戸時代の貴重な史料も含まれ、県内外の研究者や市民ボランティアが修復作業を続けている。
市は水害を教訓に開催。修復作業にも協力する国立公文書館(東京)の阿久津智広さん(36)を招いた。
この日は、実際に被災した「五箇村耕作名寄帳」など昭和初期の文書を解体した。1ページずつ番号を記入し、泥などを除去した後、エタノールを噴霧して消毒。1枚ずつ網で挟み、水で洗浄した後、吸水マットで水分を取り、乾燥させた。
こうした「洗う」技術は、大震災の津波で被災した文書を救おうと確立されたという。それ以前は主に「乾かす」だけだった。
石岡市役所で文書を管理する岡野真理子さん(35)は「きれいに修復できて驚いた」、長野県の松本市文書館の太田弥保さん(30)は「カビが生えた本物の史料。緊張感が違う」と話した。
国立公文書館は常総市の水害を機に、被災地の要請に応える救援チームを設置した。阿久津さんは「簡単で安全な技術。普及させたい」と話している。
研修会は8、14、15の3日間も開く。同市水海道諏訪町の市役所第一分庁舎で、午前9時から午後4時まで。参加無料、申し込み不要。 (松田拓朗)