下館一高、購買部のおばちゃん引退

筑西市下中山の県立下館一高(稲見隆校長)で66年間にわたり、購買部を切り盛りしてきた同所、山中艶子さん(90)が引退を決意し、「お礼の会」が22日、同校で開かれた。山中さんは生徒から感謝の手紙や花束を贈られ、「下館一高を輝く学校にしてほしい」と在校生と教員にエールを送った。半世紀を超して生徒を見守ってきた「購買部のおばちゃん」は91歳の誕生日の28日を最後に、同校を去る。
■体力の限界
購買部は、校舎と体育館を結ぶ通路の脇にある。広さ約17平方メートルの小さな木造の建物だ。
並べられた菓子パンやカップ麺を買い求めた生徒から「ありがとう」と言われ、山中さんは満面の笑みを浮かべた。
戦後間もなく、食糧事情が厳しかった25歳のころ、山中さんは同校教員から声を掛けられた。「生徒に何とかお昼を食べさせてやりたい。何かやってくれないか」。これをきっかけに購買部での販売を始めた。
かつては定時制や部活動の生徒のため、夜遅くや土日祝日も購買部を開いたが、現在は火、木曜に来校し、午前11時から午後7時ごろまで販売を担う。月、水、金の3日間は家族や親戚の協力を得て続けてきたが、体力の限界を理由に引退を決めた。
購買部は今後、別の業者が担当する予定だ。
■愛を持って接する
「素直な生徒が多い。その素直さに魅せられた」
山中さんは長年続けられた理由を語る。「先生に怒られている姿も含めて、生徒たちが好き」
生徒たちには、かわいがるだけでなく、愛を持って接してきた。数日休んで購買部に顔を出せば、生徒たちが心配してくれた。「おばちゃん元気か」。こうした言葉がうれしかった。
思い出は、野球部が1959年に夏の甲子園に出場したことだ。
購買部を利用してきた生徒や教員からは、引退を惜しむ声があふれる。
「入学時に名前を聞かれてから交流してきて、試合の後に励ましの言葉をくれた」。野球部に所属する2年、佐山樹さん(17)は感謝を口にする。同部の藤ケ崎周太さん(17)も「頻繁に声を掛けて支えてくれた」と話す。
同校卒業生で、教員としても3回目の赴任となる稲見校長は「高校時代は毎日、手作りのコロッケパンやサラダパンを食べていた」。山中さんとは今も、昔話で花が咲く。「本当に感謝に堪えない。母親のような存在だった」
間もなく同校での生活が終わる山中さんは「寂しいですね」と心境を打ち明ける。「学校にも遊びに来たい」と同校への深い思いをのぞかせた山中さんは66年間を振り返り、言い切った。「一日として嫌な日はなかった」 (溝口正則)