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バトンの代わりにテープでリレー 新型コロナで運動会や体育祭、様変わり 茨城県内の小中

バトンに代わり、次走者の腰に付けたテープを引き抜いて行ったリレー=笠間市稲田の市立稲田小
バトンに代わり、次走者の腰に付けたテープを引き抜いて行ったリレー=笠間市稲田の市立稲田小


新型コロナウイルスの感染拡大を受け、茨城県内で小学校の運動会や中学校の体育祭が様変わりしている。例年なら全校児童生徒が参加し、1日がかりで実施。しかし今年は、同感染症対策に加え熱中症対策、授業時間数の確保といった難題を抱え、実施自体に二の足を踏む学校も少なくない。実施する場合でも、時間短縮や観覧制限などを余儀なくされている。修学旅行や宿泊学習といった大きな学校行事が中止される中、生徒の思い出づくりのためにも「何とかしたい」と工夫を凝らす学校を追った。

■3日間に分散

「アカー、頑張れー」「キイロー、いけるぞー」。テント内の女子から声援が飛ぶ。グラウンドでは感染対策で軍手をはめた男子が、転倒しながら必死に棒を引き合う。

11日午前、気温29度。水戸市立第三中学校(小野瀬繁子校長)で、学級対抗の体育祭が行われた。「あんなに生き生きとした表情、授業で見たことがない」。根本亮一教諭は喜んだ。

今年の体育祭は9〜11日の3日間、学年ごとに分散実施。午前中の2時間、ほかの学年が通常授業を行う中、生徒たちはグラウンドで楽しんだ。多い年は練習に50時間を費やしたという同校だが今年はゼロ。ぶっつけ本番で、生徒が考えたプログラムを実行した。

最終日の11日は3年生約120人が参加。競技は(1)男子(2)女子(3)全体-の3種目のみ。合間に10分間休憩し、生徒たちはその都度、灼熱(しゃくねつ)のグラウンドから冷房の効いた1階教室に移動。保護者の観覧は1家庭につき1人と制限されたが、100人ほどが訪れた。

「仲間と思い出ができた。転んで傷ができたけど、その分、絆ができた」。3年の遠藤新太さん(14)は笑顔だった。「最後の年にこのような形でできた。感謝しかない」。PTAの藤沢康彦会長(56)はまなじりを下げた。

■バトン使わず

「頑張れー」。次走者を声で後押しする第1走者の児童の手には、長い色付きのビニールテープ。無事にリレーした証しだ。中継地点で前を走る次走者が腰からなびかせるテープを最後の踏ん張りで引き抜いた。

笠間市立稲田小(加藤宗治校長)では“新しい生活様式”のリレーとして、バトンの代わりにテープを考案。「しっぽ取り」と呼ばれる鬼ごっこをヒントにした。「(次走者が)リードしている中でテープを引っ張るので難しい。何とか、つかめた」。4年の井川そらさん(10)は、ほっとした表情を見せた。

運動会は「稲小スポーツデイ」に変更し、体育の授業として16日に開催。“3密”を避けるため、3・4年、1・2年、5・6年の順に2時限ずつ行い、来賓は招かず、家族の参観は認めた。トラックレーンの幅は例年より30センチ広げ、ダンス種目は児童同士が向かい合わないよう再構成。5・6年伝統のソーラン節も実施にこぎ着けた。

教員らが知恵を絞り、中止の可能性もあった行事を実現。「工夫のある面白いミニ運動会になった。コロナ禍で『できない』ではなく、(代替の)新たな行事を実施していく一歩になった」。加藤校長は手応えをのぞかせた。

「中止にならず、本当にうれしい」「成長していく子どもたちの貴重な一瞬を見られてよかった」。青空の下に、児童や保護者らの笑顔が広がった。



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