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《連載:23年統一地方選 茨城県美浦村の課題》(下) 移住者へ子育て支援 若い世代どう呼び込む

地域交流館「ふれ愛プラザ」の交流スペースで遊ぶ子どもたち=美浦村宮地
地域交流館「ふれ愛プラザ」の交流スペースで遊ぶ子どもたち=美浦村宮地


3月上旬、茨城県美浦村宮地の地域交流館「みほふれ愛プラザ」。2階の交流スペースでは、子育て支援サークル「あっぷるくらぶ」の子どもたちが思い思いにおもちゃで遊び、楽しげな声を響かせる。会員は幼稚園入園前までの幼児とその保護者9組。英語の日や工作の日などテーマを決めて活動し、季節ごとに催しも開いて交流する。

同サークルの石井優子会長(34)は、結婚を機に村に移り住んだ。村の子育て支援センターの紹介で入会し、ママ友ができて子育てが楽になったという。「外から美浦に来て、知り合いのいない中で子育てする人も多い。一人で悩みを抱え込まないようにしてほしい」と願う。

■相談や預かり

JRA美浦トレーニングセンターを擁する同村には毎年、一定数の移住者がいる。身近に頼れる人がいなかったり、働きながら育児したりする人を支えようと、村は子育て環境の整備に力を入れてきた。

村は同プラザ内にある支援センターを拠点に、保健センターや住民とも連携して村民の子育てを支える。保育士の資格を持つ職員や心理学の専門家による相談体制を整えた。子どもの一時預かり事業は、新型コロナ禍で保育所などが休所となる中でも続け、2022年度の利用数は900件を超える。同センターの担当者は「子どもたちや保護者の思いをどう受け止め、生かせるかが課題」と話す。

■統合小学校

村の少子化は年々深刻さを増す。20、21年の年間出生数は80人を割った。村内で最も児童数の少ない大谷小では、入学者が5人となり、クラス替えもできない。村は教育環境の整備を重点課題とし、大谷・木原・安中の3小学校の統合を決定。新設校の建設費は36億円を超える見込みで、美浦中の敷地内に建てる。25年4月の開校を目指す。

新設校では独自の教育を展開する。3~6年生では各教室に教科が振り分けられ、内装も教科に合わせてレイアウトされる。児童は授業ごとに教室を移る。教科担任制も採用予定で、村教委担当者は「子どもの学習意欲を高め、夢を育んでもらいたい。教員の負担も減り、教材研究に時間を割ける」と語る。

一方、統合小について保護者から要望も上がる。2~9歳の子ども3人を育てる中山万律子さん(40)は「小学校の統合を知らないママ友もいる。これから通う子どもや親たちの声を広く聞く場を設けてほしい」と訴える。

■毎年転出600人

村には高校や大学がなく、進学や就職、結婚などで毎年約600人前後が村を離れる。転出先は住環境や働き口の多い首都圏や近隣自治体が目立つ。

村は子育て環境の充実や住環境の支援を手厚くして、若い世代の移住・定住者の呼び込みに力を入れる。新婚世帯の引っ越し費用やアパート家賃を、30万円を上限に補助を実施。村商工会と連携して婚活パーティーも開く。成婚すれば村内に住むことなどを条件に最大50万円の祝い金も贈るが、利用者は過去12年で1件のみと課題もある。村担当者は「若い世代に美浦村を選んでもらえるよう、呼び込みに力を入れたい」と語った。



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