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【検証 茨城・つくば市政 市長選、市議選を前に】 (上) 《連載:検証 茨城・つくば市政 市長選、市議選を前に》(上) 交通弱者 どう支援 運転手不足でバス減便

車いすの高齢者を自家用車に乗せるNPO法人「友の会たすけあい」のメンバー=つくば市自由ケ丘
車いすの高齢者を自家用車に乗せるNPO法人「友の会たすけあい」のメンバー=つくば市自由ケ丘


茨城県つくば市茎崎地区に自家用車を使ってお年寄りらを送迎するNPO法人がある。「友の会たすけあい」(同市下岩崎)だ。依頼があれば市外へも行く。9月30日に利用した車いすの男性(83)は「自宅まで迎えに来てくれるので本当に助かる」と感謝した。


市南部に位置する茎崎地区はJR常磐線牛久駅に近く、1970年代半ばから東京のベッドタウンとして数々の住宅団地が整備された。だが、移り住んだ住民も今は70~80代。地区には約2万2千人が居住するが、高齢化率は38%と市平均の2倍になる。

同地区で暮らす外出が困難な高齢者や障害者を送迎するため、住民たちで27年前に「たすけあい」を設立した。国土交通省の認可を受けた福祉有償運送で、自家用車を使った活動が認められている。

利用会員は約100人。値段はタクシーの半額程度。土日祝日も運行し、利用者の大半が通院で使う。

ドライバーには利用料の一部が支払われるが、ガソリン代などは運転手負担。運転メンバーの斉藤幸生さん(68)は「同じようなサービスが市全域に広がれば」と願う。


6町村が合併した同市は面積が283平方キロと県内市町村で4番目に広い。市は住民の移動の足を確保するため、バス会社やタクシー会社に委託し、コミュニティバス「つくバス」、乗り合いタクシー「つくタク」を運行している。

だが、時間外労働の上限規制に伴う運転手不足を受け、つくバスは4月から減便を余儀なくされた。平日は14%減、土日祝日は33%減。「車の運転免許証を返納し、つくバスを利用しているのに減便は困る」。茎崎地区の女性(84)はため息をつく。

一方、利用者の8割が高齢者のつくタクは、運行が平日午前9時~午後4時台で、土日祝日は運休する。行き先が市外だと利用できないなど、利便性が高いとは言い難い。利用者からは「市外も走らせてほしい」との声も上がる。


市はこれまで、つくバス、つくタクの運行改善に取り組んできた。ただ、運転手不足が顕在化する中でどのように公共交通政策を展開するか、難しいかじ取りを迫られる。

つくバスは当面、減便状態が続く上、「民間バスと重複する路線は今後、整理することを検討する」と市担当者。運転手不足の切り札として、一般ドライバーが自家用車に客を乗せる「公共ライドシェア」も来年1月に始めるが、今のところ運行は一部地域と限定的だ。

人手不足は「たすけあい」にとっても大きな問題だ。今春、運転可能な12人のうち5人が高齢のため退会した。ドライバー募集のちらしを毎年地区内で配り、新たに5人が加わったものの、平均年齢が70歳を超える状況は変わらない。いつまで活動できるのか、不安は尽きない。

「われわれの活動もライドシェアの一つだが、利益を求めないボランティアの善意で何とか維持されている」と佐藤文信理事長(74)。「高齢者の足の問題は今後ますます深刻化する。行政には住民の声を吸い上げた地道な施策をお願いしたい」と話す。


20日告示、27日投開票のつくば市長選・市議選を前に同市の課題を探った。



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