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《連載:悲劇のあと 茨城・特殊清掃の現場》(上) 孤独死

遺品とごみを分けながら清掃するスタッフ(スイーパーズ提供)
遺品とごみを分けながら清掃するスタッフ(スイーパーズ提供)


■高齢者の孤立 深刻に 心身消耗も「使命感」

特殊清掃業「スイーパーズ」(茨城県かすみがうら市)のスタッフ、小林優吾さん(24)は8月、同県南地域の70代男性方の清掃と遺品整理の依頼を、親族から受けた。男性は末期がんで1人暮らしをしていたが亡くなり、発見されたのは2~3週間後とみられている。

▽屋内作業

男性は寝床としていたと思われる2階で、新聞や食品の空き容器、ペットボトルなどが山になった上で亡くなっていた。

作業は厚手のゴム手袋を着け、ごみをひたすら袋に詰めていく。床が見えると薬剤を使って洗浄した。

周辺住民が孤独死のあった場所と気付いている場合もあるが、同社は不安を与えないために部屋の中で防護服を着脱するよう徹底。同所は真夏の日当たりのよい部屋での作業だったが、悪臭を外に漏らさぬよう窓を閉め切ったままにした。

部屋の中には、亡くなる間際に調理したであろう料理がそのまま鍋に入っていたり、大量の清涼飲料水のペットボトルや雑誌などが散乱したりしていた。小林さんは故人について「生活が苦しいながらも自分で食事を作り、小さな楽しみを糧に必死に生きていたのだろう」と想像した。孤独死の現場では作業中、「とにかく『無』で、何も考えずひたすら洗浄作業に集中する」と話した。

自殺や孤独死があった部屋を消臭後は、あえて遺族と共に遺品整理を進める。写真や孫からもらった絵なども確認してもらい、思い出話をしてほしいからだ。「遺品整理をやれてよかった」と語る依頼者は多い。

同社の小山奈津美代表は日々ショッキングな光景に立ち合うが、遺族を思って表情には出さない。ただ、清掃を終えると「なんでこうなっちゃったんだろう」とやりきれない思いが湧く。

▽身近な死

警察庁の統計によると、今年上半期(1~6月)に自宅で死亡しているのが見つかった1人暮らしは同県内で773人に上り、うち583人が65歳以上の高齢者だった。

また、全国の警察が上半期に扱った1人暮らしの遺体のうち、死亡推定から遺体発見までの経過日数は、当日~1日以内が全体の40%を占めたが、1カ月以上も11%あり、周囲との交流が乏しい現状が浮かぶ。

日本総合研究所の試算では、高齢者の独居率は2020年の14.8%から40年には18.9%まで上昇する見込み。内閣府の調査では、「孤独死を身近に感じるか」という質問に対し、高齢者の約半数が「とても感じる」か「まあ感じる」と回答している。

▽年々増加

同社は月当たり60件の依頼を受け、約7割は孤独死の現場だ。16年ごろから孤独死の特殊清掃を本格化し、件数は年々増加。ここ5年間で2倍超になった。依頼は全国から受け付けており、協力会社に振り分け対応することもある。

体力的にも精神的にも消耗する仕事だが、小林さんは「何もなかったかのように現場を仕上げられたときや、お客さまから感謝の言葉を頂けると達成感や使命感を感じる」と語る。

孤独死や事件事故の現場、「ごみ屋敷」などを清掃し、原状回復する「特殊清掃」。需要が高まる中、県内外の依頼に応える事業者の姿を追った。



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