【手仕事のみらい】 (0) 《手仕事のみらい》シューメーカー 鯨岡淳紀さん(茨城・水戸市) 自分の「好き」を形に 遊び心加えたデザイン
紳士靴専門のシューメーカーとして活動する鯨岡淳紀さん(30)=茨城県水戸市=は自身のブランド「Blue Whale」を通して、自身の「好き」を突き詰めた靴作りを続けている。
靴作りを始めたきっかけは、おしゃれな知人の存在。全身こだわりの装いの中でも、特に心を引かれたのは足元の革靴だったという。興味を持ち探してみるが、既製品では満足のいく商品が見つからなかった。
理由は、親指と小指の付け根の骨を基準に、足を1周ぐるりと結ぶ靴の寸法の一つ「足囲」だった。足を固定し履きやすさを左右するポイントで、合わないと靴ずれなどの原因になる。この足囲が平均より極端に細く、自分に合う靴が全く見つからなかった。
履き心地のよい靴を求めてパターンオーダーなどを試す中、「自分で作れば、好きなデザインで自分に合う靴を履ける」と思い至った。革靴作りの教室に週1回通うことから始め、次第にのめり込んでいった。
製作を始めたことを知った靴好き仲間から依頼を受けるようになり、2020年に「Blue Whale」として活動を始めた。
フォーマルなデザインをベースに、少しの遊び心を加えたデザインが持ち味。多種多様な好みを持つ顧客たちと向き合いながら、相手の理想と「自分らしさ」を融合した製品作りを意識してきた。「多くの作り手の中から僕を選んでくれた。せっかくなら、僕らしい要素を入れられたら」
時には挑戦的なデザインを取り入れるなど模索を続ける中で「残るものが自分らしさなのかも」と実感。かかと側面に曲線のステッチを施したデザインを考案した際には、尾を振り上げたクジラのように見え、自身の中で一つの手応えを感じたという。
現在は展示会や交流サイト(SNS)を中心に活動。既存の木型やパターンを基に使う革を選べる「メードトゥオーダー」や、顧客ごとに調整した木型を用いさらに自由にカスタマイズできる「メードトゥメジャー」で製作している。「展示会の機会を増やして、より広く展開していけたら」とし、「自分の好みを1人でも多くの人に気に入ってもらえたらうれしい」と願う。
将来の展望についてこう話す。「SNSを見ると、自分と同じように靴探しに苦労している人たちがいる。同じ悩みを持つ人に向けて、靴選びのいい選択肢となる存在になりたい」
■おしゃれは足元から
「おしゃれは足元から」と言われるほど、コーディネートの要となっている靴。革靴は公私問わず生活のあらゆる場面で活用できるよう多彩な様式が生まれ、各国の文化に影響されながら魅力的な製品が数多く作り出されてきた。
爪先に横一文字のステッチが入り、ビジネスシーンでは最もフォーマルな「ストレートチップ」、W字の羽のような意匠が華やかな「ウイングチップ」など、デザインはさまざま。TPOに応じた靴選びは欠かせないが、カジュアルシーンでは自由に服との組み合わせを楽しめ、個性を表現できる。
鯨岡さんは「全体のイメージがちぐはぐにならないよう、バランスの取れた選び方ができるといい」と話す。
■くじらおかあつき
1995年、東京都生まれ。2017年にレザークラフトを始め、20年に「Blue Whale」として活動を開始。
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