【常総市政の課題 市長選を前に】 (上) 災害時の感染症対策
28日告示、7月5日投開票の常総市長選を前に市の課題を探った。
新型コロナウイルス対策の最前線に立つ自治体では、水害などの自然災害発生時の感染症対策を迫られている。「3密」(密閉・密集・密接)の条件がそろいやすい避難所でどう感染を避け、不足する避難所をどう確保するか課題が浮かび上がる。
国は今年4月、新型コロナ感染を防ぐため、災害時にはできる限り多くの避難所を開設することを都道府県などに通知した。水害や大地震が発生したら、市民が避難所に押し寄せる。そんなさなか、新型コロナウイルス感染者がいたら-。
2015年9月の関東・東北豪雨で甚大な被害を受けた常総市では、市内外の避難所39カ所に約6200人が避難した。つくば市内の会社に勤務する常総市の男性(42)は「災害と感染症の同時発生が一番怖い」。水害の経験から「災害が発生すれば3密なんて気にしていられない」と話す。
▼収容数22%減少
6月上旬、指定避難所の石下総合体育館(同市鴻野山)で、新型コロナ対策を踏まえた避難所開設の訓練が行われた。
市防災危機管理課によると、災害時の市内の指定避難所は29カ所あるが、水害時は14カ所となる。新型コロナ対策で避難者1人当たりのスペースを広く取ると、収容人数が昨年と比べ22%減少するという。指定避難所である市内の体育館で見ると、これまでは7486人収容できたが、1人当たりの避難スペースを通常の3・3平方メートルから4平方メートルに広げたことで5905人となる。
避難所の不足に備え、市は保育所や小中学校の教室、公共施設の駐車場を活用する予定だが、「避難所に来ることで、感染リスクが高まることも周知する必要が出てくる」(同課の担当者)と避難情報の出し方にも工夫が求められる。
▼行政と連携不可欠
支援が必要な障害者など「災害弱者」のための福祉避難所整備も課題だ。常総市で障害者の支援やサポートを行う「障がい者の防災を考える連絡協議会」事務局の横島智子さん(63)は「個人個人に合ったきめ細やかな対応が必要になる」と指摘する。
例えば、避難所の受付では聴覚障害の人はマスクで口の動きが分からなくなるため、対応する職員はフェースシールドを着用するなど工夫が必要となる。
最大の懸念は体力がない障害者の避難所での感染リスク。安全を確認した上で自宅にとどまる「在宅避難」も選択肢になる。
一方で、「支援するにも、どの地域にどういう障害のある人がいるかを把握するには個人情報の壁がある」といい、誰一人見過ごすことなく支援するには行政との連携が不可欠となる。市は今回の検証結果を今後の避難所運営のマニュアル作りに生かす考えだ。
第2波、第3波が発生する可能性が高いと考えられる新型コロナ。住民と密接に関わる市の取り組みには新たな知恵が求められる。