【常総市政の課題 市長選を前に】 (下) 町の活性化
首都圏中央連絡自動車道(圏央道)常総インターチェンジ(IC)周辺で着々と工事が進む「アグリサイエンスバレー構想」-。市は地域経済の活性化や人口増加に結び付くとしており、市幹部も「地域の拠点となり、活性化に大きなインパクトを与える」と期待を寄せる。
農業の6次産業化を目指し、農産物の生産から加工、流通、販売を一体化する。開発エリアは常総ICに直結する国道294号沿いの水田約45ヘクタール。このうち約31ヘクタールを「都市エリア」とし、農産物の加工や物流に関連した企業の誘致や道の駅を建設し、約14ヘクタールを「農地エリア」とする。2022年3月の工事完了を目指している。
市は道の駅を年間数十万人が訪れる「まちの顔」と位置付けるが、「全国どこにでもあり珍しくない。本当に拠点になるのか」という市民の声もある。
▼出生数の減少
市にとって人口減少は長年の課題であり、特に子育て世代の定着に頭を抱える。出産を機につくば市内に引っ越した契約社員の女性(31)は「(常総市は)住みやすいが子育てを考えると、より生活環境が整った町を選んだ」と本音を漏らす。
市市民課によると、同市の出生数は10年度から減少傾向にあり、15年度には400人台を割り込み、昨年度は285人にまで落ち込んだ。市の「子ども・子育て支援事業計画」の推計でも0〜17歳の子どもの人口は21年は8657人で、24年には8237人となる見通し。
子育て世代が市外に出る理由として、つくばエクスプレス(TX)を利用し、東京や千葉へ通勤するため引っ越す世帯が多くいることだ。常総市の人材支援会社「AJヒューマンキャピタル」の浅島秀幸社長(47)は「女性が子育てしながら働きやすい環境づくりが企業に求められる」とし、「時短勤務、テレワークなどライフスタイルに合わせた柔軟な働き方ができる体制を整備する必要がある」と指摘する。
▼「多文化共生を」
一方で、人口の約9%(約5500人)を外国人が占める常総市。外国人が住みよい町づくりも重要になる。
生活相談や通訳業務といった外国人支援を長年続けてきた「茨城NPOセンター・コモンズ」の横田能洋代表(52)は、市と外国人の「対話のテーブル」を設けるべきと提案する。
5年前の常総水害の後、地主が手放した土地を買って、家を建て移り住む外国人が増加している。市内への定住化や社会との接点が増えるメリットがある一方で、市内の食品工場などで働く非正規労働者が多く、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、多額の住宅ローンを残して職を失う可能性もある。横田さんは、銀行やファイナンシャルプランナーと共に市内に住む外国人への「金融教育」に取り組みたいという。
今後、外国人の割合が2〜3割と増えていくことも考えられ、行政には「多文化共生をつくる旗振り役になってほしい」と話す。