【検証 つくば市政、市長選・市議選を前に】 (上) 未利用地問題
18日告示、25日投開票のつくば市長選・市議選を前に同市の課題を探った。
2015年に住民投票の結果、約8割の反対を受け白紙撤回された、つくば市の「総合運動公園整備計画」。現在も、約45.6ヘクタールある高エネルギー加速器研究機構(高エネ研、同市大穂)の南側の建設予定地「高エネ研南側未利用地」の活用方法は決まっておらず、いまだ宙に浮いた状態になっている。
今年6月、市民が市政の現状や課題を検討しまとめた「つくば市民白書2020」が発行された。同書の最初の項目は「総合運動公園問題」。同問題に関心を寄せる3人が、投票の経過を振り返ったり、未利用地の活用方法などについて提言したりしている。
同書実行委員長を務める山本千秋さん(80)はかつて、住民投票を推進する市民団体にも参加していた。同計画の白紙撤回が市長交代の大きな要因になったことから、未利用地問題を「市政の焦点」と位置付け、「市民の願いを実現するという目標に向かって利用方法を考えてほしい」と訴える。
■返還は不可能
未利用地は、14年に同市の委託を受けた市土地開発公社が総合運動公園用地として都市再生機構(UR)から約66億円で取得した。購入には金融機関からの借入金を利用しており、現在でも年間約3500万円の利息が発生している。
白紙撤回後、市はURとの返還交渉に着手。契約解除や買い戻しを提案したが、URからは土地の返還には応じられないとする回答書が提出された。
返還が不可能になったことで、市は民間業者への土地売却の方向にかじを切った。市は同公社の保証人になっており、借入金の返済期限である24年3月までに、購入額に利息分を上乗せした金額を支払わなくてはならない。売却を行うことで、市の負担を抑えたい考えだ。
公募の結果、民間事業者1社が約40億円以上の価格で買い取りを希望した。事業計画では商業施設や物流倉庫の誘致を提案しているという。
■「相当な時間」
売却が進む中、市議会からは差額が約20億円と大きすぎることや、1社だけでの提案では疑問が残るといった声が上がった。19年9月に調査特別委員会が設置され、売却の動きは一時的に停止した。
委員会では、これまでに4回の会合と3回の勉強会を実施。市執行部との意見交換やグループワークなどを通して、売却も含めた活用方法について検討を進めている。委員会では、20人以上が「一部公共利用」の考えを示しており、完全な売却は行わないという考えが優勢。ただ、利用する範囲や利用案については多数の意見が出されている状態になっている。
8月に行われた同委員会の中間報告によると、陸上競技場や防災拠点、研究所といった案が出されている。改選後も調査・検討を続けていく方針だが、ある市議は「一つに考えをまとめるには相当な時間を要する」と展望する。
山本さんは「考え抜いた案を作った上で市民の意見を聞いてほしい」と話す。期限がある中、市民が納得する方法を打ち出せるか、対応が問われている。