次の記事:ビール原料に生き埋め 男性死亡 キリン工場

【茨城・龍ケ崎の行方~市長選を前に~】 (中) JR駅名改称

改称されたJR常磐線龍ケ崎市駅の東口=龍ケ崎市佐貫町
改称されたJR常磐線龍ケ崎市駅の東口=龍ケ崎市佐貫町


■式典中止、改修先送り 「選ばれるまち」評価を

▽市の玄関口

送迎の車の合間を縫うように、通勤通学客が駆ける。

11月24日早朝、JR常磐線龍ケ崎市駅。2020年3月に佐貫駅から改称された。茨城県龍ケ崎市の玄関口だ。

佐貫駅は1900年、旧馴柴村佐貫で開業した。54年に旧龍ケ崎町が同村などを編入して市制施行すると、名前にずれが生じた。

駅名と市名を一致させて知名度を高め、選ばれるまちにする-。市はこんな青写真を描いた。2014年からJR側と協議が重ねられた。改称のための負担として、市は約2億2470万円を支出した。

接続する関東鉄道竜ケ崎線佐貫駅の名は変わらず、佐貫と龍ケ崎市両駅が併存することになった。

▽コロナ禍

龍ケ崎市駅の誕生から、あと数カ月で3年目。関連事業は新型コロナウイルス感染症に振り回された。

記念の式典やイベントは感染予防のために次々と中止され、新駅名を周知する機会は限られた。市では本年度、利便性を高めて玄関口にふさわしい環境とするため、歩車分離を含む東口ロータリーの大規模改修にも乗り出そうとしたが、先送りの決断が下された。

市が独自に実施している調査に基づくと、コロナ流行前の19年秋と今年秋を比較すると、混雑ピーク時に東口ロータリーに進入した車両の交通量は15%減。JR東日本によると、近年は1万数千人で推移していた1日平均乗車人員も20年度は1万人を割り込んだ。コロナ下での出控えやテレワークの推進が背景にあるとみられる。

市幹部は「改称などの事業が持ち上がった頃といまの状況を比べると、大変な差がある。コロナ対策に優先順位は移った」と明かす。

▽「根拠を」

賛否を問う住民投票を求めて動いた「JR佐貫駅の改称問題を考える会」の代表を務める男性(85)=市内在住=は「駅名を変えて、人口は増えるなどしたか。改称を望んだ人もいることは確かだが、双方を納得させられるだけの根拠が必要だ」と指摘する。

考える会が提出した住民投票条例案は15年秋の市議会で否決されたが、集まった署名は1万筆近くに達した。市幹部は「もっと合意を形成すべきだった。改称の効果は具体的に測れないところがある」と語る。

「選ばれるまち」の実現には、冷静な自己評価に加え、市の魅力を高めていく政策が欠かせない。



茨城の求人情報

全国・世界のニュース