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【茨城・高萩の未来 市長選を前に】 (下) 財政健全化

高萩市の市営住宅。人口減少や建物の老朽化などで、市は公共施設を削減していく方針=同市内
高萩市の市営住宅。人口減少や建物の老朽化などで、市は公共施設を削減していく方針=同市内


■公共施設、負担重く 緊縮、投資の均衡不可欠
かつて「茨城県内ワースト」となったこともある高萩市の財政。市は計画的に健全化に取り組んできたが、年月を経てもなお、最重要課題として横たわっている。

まずは第三セクターである土地開発公社、住宅公社の整理だ。1990年代、企業誘致で人口増を図る市の意向で、開発公社は赤浜地区工業団地(同市赤浜)を整備し、住宅公社は従業員の居住地として「グリーンタウンてつな住宅団地」を用意した。

しかしバブル崩壊、不景気で誘致は難航。初めて企業が進出したのは97年の分譲開始から10年後だった。最後まで残っていた用地の分譲が完了したのは昨年で、実に四半世紀がたっていた。一連の債務は約77億円にまで膨れ上がった。

市は2008年、「行財政健全化計画」を策定し、歳入の確保や事務事業の再編整理など、大きく分けて九つの項目で財政基盤の再構築を図った。現在は25年度まで5年間の第4次計画に基づいて取り組みを継続している。

同市の財政の将来負担比率、数値が高いほど一般財源の余裕度が低いとされる経常収支比率は07年、県内ワーストとなった。しかし開発公社の債務が18年に返済を完了するなどして、市は「着実に改善が図られてきた」とする。

しかし、10年に解散・清算した住宅公社の債務返済は30年までかかる見通し。さらに今後重くのしかかってくるのは、公共施設の負担だ。

1970~80年代に多く整備された公共施設は現在、全体の6割が築30年以上となり老朽化。毎年いずれかの施設で改修・更新が必要となっており、橋などのインフラもこれから更新時期を迎える。現状のままいけば、公共施設とインフラで毎年31億円ものコストがかかると試算されている。今後の人口減少で税収も下がって財政が硬直化し、投資的な事業に資金を回せないことが予想される。

市は2015年度に「公共施設等管理計画基本方針」、20年に同計画の改訂版を策定。向こう40年間を目標期間として、公共施設の面積を62%(約9万平方メートル)、コストを73%(年約12億円)、それぞれ削減する方針を打ち立てている。

一方、市政が「緊縮」「減少」だけになっていけば、市に活力を感じられなくなった子育て世代や若者は転出し、社会減を加速させることになりかねない。

市内に住む30代の女性は「災害もなく住みやすい。今は外に出ているが高萩に戻ってきたいという友人も多くいる」と話す。一方、「高萩にいても仕事はないし、何にも挑戦できないから他に行こうとなってしまう。若い世代も含めて意見交換をして、新しいイベントや事業に意欲的な雰囲気を出してほしい」と語った。

財政健全化の着実な進展と人のぬくもりを感じる市民サービスの維持、市民が市の未来に希望を持てる投資。市長にはバランス感覚と難しいかじ取りが求められる。



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