【茨城県下妻市の針路 市長選を前に】 (下) 公共施設の老朽化
■2拠点複合化白紙 財源、利活用策課題に
茨城県下妻市内には築数十年の老朽化した公共施設が大小含めていくつも存在する。築50年以上の市役所本庁舎(同市本城町)はその代表格で、長年の調査・検討の末、同庁舎東側の位置に50億9960万円(契約金額)をかけ建て直すことが決定。2023年5月の供用開始を目指し工事中だ。
その工事フェンスの北側には、市の文化教養の拠点施設、市民文化会館(同市本城町)と下妻公民館(同)がある。共に築40年以上がたち老朽化と設備劣化が著しく、市は19年3月に両施設に代わる複合化した新施設「地域交流センター」の整備を表明。しかし半年後、議会などさまざまな意見があったことで、その在り方を含め再検討すると発表し、計画は事実上の白紙状態となった。
両施設は20年1月に閉館したものの、現在、同公民館は暫定で1階に市社会福祉協議会など3団体の事務所が置かれ、2階の会議室などは市民に貸し出されている。一方で3階建ての同会館は荷物置き場と化し、各種コンサートや成人式でにぎわっていた面影はない。秋恒例の市文化祭の主会場として使われ、練習の成果を披露していた団体代表の男性(73)は、2年以上進展のない現状に「他の団体の皆さんも同じだと思うが、ぜひ使えるようにしてほしい」と早急な対応を望んだ。
両施設の整備を巡り、市市民協働課は「決定している方針はない。新型コロナウイルスの影響もあって集会施設の在り方を、先を見据え慎重に検討している」とした。同会館は一部に耐震性能不足を抱え、耐震補強を含めた大規模改修費は12億6千万円と試算する。
市は人口減少や少子高齢化が進み、将来的に財政悪化も懸念されることを踏まえ、16年に「下妻市公共施設等マネジメント基本方針」を策定した。公共施設の保有量(延べ床面積)を30年間(16~45年)で30%削減する目標が設定された。市財政課によると、公共施設は110施設、同面積約14万3千平方メートル(20年度末)に及ぶ。中でも築30年以上経過した施設が全体の60.4%を占め、大規模改修の積み残しも複数出ている。
新庁舎には、市役所千代川庁舎(同市鬼怒)の教育委員会や経済部などが移転する運び。築40年以上がたち耐震診断が未実施の同庁舎の利活用は決まっておらず、同会館や同公民館の在り方、本庁舎の解体時期や跡地利用など市民にどう方針を示し実行に移すのか。
市民のニーズとサービスの質を保ちながら、限られた財源を有効活用する新市長のマネジメント力が問われる。