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【茨城・つくばみらい市の未来】 (下) 《連載:茨城・つくばみらい市の未来》(下) 新規就農

クボタ社員からトラクターの使い方を学ぶ参加者=2021年5月、つくばみらい市板橋
クボタ社員からトラクターの使い方を学ぶ参加者=2021年5月、つくばみらい市板橋


■担い手の安定確保模索 現場と一体的支援重要
「谷原三万石」として知られるコメの産地、茨城県つくばみらい市。農業は市の基幹産業の一つだが、近年は高齢化を背景に離農者の増加や担い手不足が深刻化している。新規就農者の確保が課題となる一方、就農を望みながら初期投資などが壁となるケースも。参入のハードルをいかに低くするか模索が続く。

▽農機シェア
「トラクターを買うには数百万円かかる」。新規就農者にとって農機をそろえることは難題だ。

市は昨年5月、全国初の農機シェアリングを始めた。市内に工場がある農機大手「クボタ」と組んで、小型トラクターなどの農機を廉価でシェアリングできる仕組みだ。就農の壁となっていた初期投資負担を抑える狙いがある。

スマートフォンで会員登録し、講習を受けた後、農機を使う日時を予約する。1時間2200円で24時間いつでも使える。料金には燃料代も含まれている。購入するよりも格安というわけだ。利用者からは「浮いたお金を肥料購入などに活用できる」などと好評だ。

▽厳しい状況
県の調査によると、2019年度の新規就農者数(16~44歳)は前年度に比べ57人減の321人だった。15年度から現行の統計を取り始めて以来、初めて減少した。コメ作農業を主力としてきた同市でも年々、離農者は増加している。

それにともない、1人当たりの耕作面積は東京ドーム1個分にまで広がり、「(コメ作農業は)非常に厳しい状況」(市幹部)という。市などによると、市内の遊休農地も125ヘクタールに及ぶ。

一方で、同市の新規就農者は過去5年と比較し、3倍に増加しており、担い手の安定した確保につなげるため行政だけでなく農業現場などとの一体的な支援が重要になる。

▽あの手この手
市は就農につなげようとさまざまな角度からアプローチしている。

新型コロナウイルス禍で苦しむひとり親家庭と担い手不足に苦悩する農家を支援する実証実験では、寄付1件(5千円)で、市内産コシヒカリ10キロがひとり親家庭を支援するNPO法人を通じて全国のひとり親家庭に届けられる。

そのほか、市民を対象に農園1区画(約30平方メートル)を5千円で貸し出している。28区画から始まり、現在134区画まで増やした。市民農園をきっかけに就農への発展も期待する。

新規就農を後押しするとともに将来の担い手を育成し、地域農業を活性化できるかが今後の課題となりそうだ。



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