【検証 参院選茨城】 (上) 《連載:検証 参院選茨城》(上) 自民・公明 高い目標「緩み」排除
現職2人が引退し、8新人が争う世代交代選挙となった参院選茨城選挙区の戦いを振り返る。
「勝負は決まった」
自民党県連の関係者からこうした声が漏れたのは、参院選まで半年以上を残す昨年12月。党公認候補に加藤明良氏(54)が決まった時期だった。強固な「保守王国」の中での「緩み」とも言えた。
国会議員秘書18年、県議3期約12年、政治の世界に身を置いてきた加藤氏。県議選は3回ともトップ当選を誇る。地元水戸市周辺以外での知名度が課題とはいえ、県連は絶大な信頼と勝利の自信があった。
茨城選挙区(改選数2)は、自民の岡田広氏(75)と立民の郡司彰氏(72)が昨年11月に不出馬を表明。公募で早々と後継候補を決めた自民に対し、「指定席」を分け合う形で議席を守ってきた旧民主党系は、候補者選定が難航していた。
自民県連内の一部では、2議席独占に向けて「2人立てるべき」との声が残っていた。選挙まで2カ月と迫る中、連合茨城が候補を擁立。立民、国民が推薦する「2党1団体」の一本化が決まると、2人擁立論は一気に消えた。
■「70万票」目標に
「どれだけ多く、声かけができるかの勝負。新人で知名度はまだまだ。そこを圧倒的な得票によって存在感を示してほしい」
選挙戦序盤の6月下旬、常陸太田市内での街頭演説で、自民党県連の梶山弘志会長の檄(げき)が飛ぶと、和やかだった党関係者らの表情が引き締まった。
県連は今回、目標を「70万票」と高く設定した。その強さから「選挙の神様」と称された岡田氏が2016年参院選で得た約60万票をはるかに超えた。新人にとって極めて高い目標だったが、県連幹部は県内隅々を巡る遊説の中で、繰り返し「70万票」を叫び、陣営や支援者らの緩みを排除、高みを目指した。
■県議選へ警戒も
加藤氏が得たのは54万4187票。目標には届かなかったが、2位当選者の約2・7倍。約35万票の差をつけ、初陣ながら「圧倒的な存在感」を見せた。
県連の西條昌良幹事長は「高い目標で重圧をかける。これが自民党の底力につながる」と胸を張る。自民と連立政権を組み、加藤氏を推薦した公明党県本部の高崎進代表も「新人では十分な得票数。候補者本人、自民党の力がすごかった。自公協力も見せられた」と語った。
初当選から一夜明け、得票数について報道陣から尋ねられた加藤氏。「(70万票は)高い目標だが、志高く頑張れという数字だと受け止めていた。将来、一歩でも近づけるようにまい進したい」と決意を新たにした。
選挙戦では、日本維新の会など他の勢力に保守票が一部流れたとみている。自民県連幹部は「参院選が終わったら、12月の県議選。水戸、つくばでも一定数、票が取られており、さらなる足場固めが欠かせない」と話し、次の戦いへ警戒感を強める。