《連載:検証 参院選茨城》(中) 立民・国民・連合 激戦制し高まる結束
「立憲民主党、国民民主党には、それぞれの思いや課題をのみ込み、乗り越えていただいた」
無所属の堂込麻紀子氏(46)の勝利が確実となった直後、擁立した連合茨城の内山裕会長は両党県連への感謝の思いを口にした。「両党の英断がなければ、この結果は出せなかった」
堂込氏擁立までには、曲折があった。昨年11月、立民の郡司彰氏(72)が引退表明後、後継者を巡り両党県連がそれぞれ独自候補擁立へ向けた公募を開始。連合茨城が統一候補擁立を目指すも、調整は難航した。
郡司氏が24年間守ってきた「労働界の議席」。連合茨城にとって、この議席の死守は最重要課題だった。「野党がばらばらでは議席は取れない」。3者協議を呼びかけ、両党に配慮した「無所属候補」としてようやく一本化がまとまったのは、5月のメーデーが直前に迫った頃だった。
■「無所属」の立場
政党の看板を背負わない、政治経験もない新人-。選挙戦は終始、知名度向上が大きな課題となった。出馬の出遅れも響いた。無所属としての立ち位置に、有権者からは「どの政党の人なの」と聞かれることも少なくなかった。
「働く仲間、生活者の代表として、国政に皆さんの声を伝えたい」
このため、堂込氏は柱に据えた政策や自身の経験などに加え、郡司氏の後継としての立場も強調し続けた。知名度不足を埋めるため、両党の幹部が相次ぎ県内入りし、街頭や集会などさまざまな場面で支持を呼びかけた。公示日当日の出陣式には、連合から芳野友子会長も駆け付けた。
他党からの切り崩しも激しかった。各紙の情勢調査では自民候補の優勢が伝えられる一方、2議席目の「競り合い」が報じられた。特に、陣営は勢いを増す維新の候補を警戒、自民党と旧民主党系が分け合ってきた「指定席」のイメージ払拭に努めた。
■つないだバトン
「強い野党を目指し、茨城から大きな固まりをつくるきっかけにしたい」「これからの野党、日本の政治をより前進させるため、ともに歩みたい」
10日夜、郡司氏からのバトンを引き継いだ堂込氏を祝う水戸市内の会場。立民県連の青山大人代表と国民県連の浅野哲代表は、それぞれあいさつで野党の在り方に触れた。激戦の末、「2党1団体」で勝ち取った結果に、さらなる結束機運の醸成へ期待を寄せた。
連合茨城加盟の組合員は約13万5千人。両党も全県で支援者回りを展開し、強い協力体制を敷いた中で、堂込氏が獲得した得票数は19万7292票。次点の維新候補に3万8千票差まで迫られた。陣営が目標に掲げた40万票の5割にとどまり、旧民主党系で議席を確保してきた1995年以降の参院選で、初めて20万票を下回った。
「もう少し票は取れたはず。当選して『良かった』だけでは済まされない」。12月の県議選、来春の統一地方選も見据え、内山会長は勝利の余韻が残る会場で表情を引き締めた。