次の記事:常磐道で速度違反、身代わり出頭させる レーサーら逮捕

《連載:茨城・城里町の課題 町長選を前に》(上) 就農支援 若手への継承、仲介が鍵

猛暑の中、ナスを収穫する渡辺雄希さん(左)と妻の麗香さん=城里町増井
猛暑の中、ナスを収穫する渡辺雄希さん(左)と妻の麗香さん=城里町増井


■孤立防ぎ、交流の場を

任期満了に伴う茨城県城里町長選は23日に告示、28日投開票で行われる。選挙戦を前に町政の課題を探った。

猛暑日が続く8月上旬。城里町増井の畑では、新規就農5年目の渡辺雄希さん(33)と妻の麗香さん(34)が、ナスの収穫に追われていた。栽培面積は約12アール。V字型の支柱には720本ものナス木が結わえられ、濃い紫色の実が真夏の日差しを浴びていた。年間約9トンを収穫するという。「作業は10月末まで続きます。きついですが、毎日の売り上げも把握でき、やりがいを感じます」。雄希さんは穏やかな笑顔を見せた。

同町出身。実家は非農家だったが、中学生の時に農業関係の仕事に憧れ、農業高校に進んだ。水戸市の非農家に生まれた麗香さんは高校の同級生だ。2人は卒業後、農業の専門学校に進学。その後、県内のいくつかの農業法人で経験を積み、自然な流れで独立に至った。雄希さんは「就農の地に城里を選んだのは、若い就農者が多かったから。ここでなら続けられる」と直感したという。

中山間地域が広がる同町は、農業が主要産業の一つ。就農支援は農政の柱となる。経営安定に向けた資金的サポートなどとともに、中心となるのが地域おこし協力隊の受け入れだ。

町農業政策課によれば、2017年度からこれまでに、農業部門の隊員9人を受け入れ、7人が就農定住するなど実績を重ねる。現在は5人の隊員が地元農家の下で研修中だ。初代の協力隊員でもあった麗香さんは「技術面だけでなく、地元農家とつながりを持てたことが財産となった」と振り返る。

言葉通り、後継ぎが決まらない地元農家と協力隊の橋渡しは行政の役割となる。同課は「互いの要望を聞き柔軟にマッチングさせていくかが鍵となります」と話す。元牛繁殖農家の町内の男性(72)は「子どもは後を継がなかったが、町の仲介により、昨年、意欲のある協力隊員に託すことができた」と感謝する。

同町に根を下ろす覚悟を決めた渡辺さん夫妻には不安もある。「農業は天候や健康状態に左右される。悩みを相談できるコミュニティーをつくることも重要だと思う」と麗香さん。雄希さんは「好きで始めた仕事だが、農業に明け暮れるのもつらい。後に続く若い人のためにも、趣味を楽しむ時間を持っていきたい」と明かす。

同課では「若手就農者の孤立を防ぐため、定期的に交流できる場などを設けていきたい」としている。

茨城の求人情報

全国・世界のニュース