■老朽化対策待ったなし　築40年超半数、方針策定へ
茨城県ひたちなか市阿字ケ浦町に10月16日、地域住民のコミュニティー施設「阿字ケ浦ふれあい交流館」が開館した。

交流館は2021年3月に年に閉校した旧阿字ケ浦中校舎を活用した。会議室や音楽室、調理実習室のほか、防災倉庫も備え、災害時には市指定避難所としても使われる。

阿字ケ浦地区にはこれまでコミュニティー施設がなかった。館長の小池勝利さん(77)は「地元の象徴だった校舎を活用できてうれしい」と喜び、「そば打ちや文化祭などいろいろな企画を実践したい」と意気込みを話す。

ただ、校舎は築50年を超え、老朽化している。耐震補強工事などの改修が行われ、安全は確保されているが、市市民活動課の担当者は「今後、施設をどうしていくかも考えなければならない」と語った。

今後の公共施設の配置や施設の保全、維持管理など、公共施設の全体方針の調整を行うため、市は本年度の組織改編で「資産経営課」を新設した。

市内には市役所庁舎やコミュニティーセンター、学校施設など、高度経済成長期に建てられた施設が多く、築40年超の老朽化施設が全体の半数以上を占め、「待ったなしの状況」(同課)だ。

限られた財源で、今ある施設を全て建て替えることは事実上困難。だが、廃止してしまうのは市民サービスの低下につながる。施設利用を続けても、老朽化対策を先送りすれば重大事故のリスクを高める。

市は各施設の担当課だけでなく、同課で一元的なマネジメントを始めた。

同課は22、23年度で各施設の劣化状況を調査。将来の負担コストや施設の目標使用年数の考え方、適正な保有量などをまとめた「施設保全計画」を作る。

同計画を基に25年度までの3年間で、各施設の方向性を記載した基本方針を策定する。同時に各施設ごとに修繕や改築、長寿命化対策をする時期のほか、建て替えの検討を始める時期などの大まかな目安も示したい考えだ。

その結果、施設の長寿命化や建て替え、場合によっては統廃合を迫られる施設も想定されるが、市民サービスが低下しないよう、新施設の多機能化や複合化することで利便性の維持、向上を図る。

ただ、いずれの施設の方針を決めるのにも、大事なものはそれらを利用する市民の声。同課は「市民や市議会と丁寧な議論を重ね、納得していただけるような方向性をまとめたい」としている。