【茨城・大子町の課題 町長選に向けて】 (上) 《連載:茨城・大子町の課題 町長選に向けて》(上) 観光 周遊促進、新たな試み
茨城県大子町長選は13日告示、18日投開票で行われる。町長選を前に、町の課題を追った。
■客回復へ魅力再構築
惜しまれながら5月、人気の温浴施設が閉館した。「長い間ご愛顧ありがとうございました」。24年余りの歴史に幕を下ろす告知が入り口に貼られていた。「郷土料理と露天温泉が好きだった」「ちょうど良い距離で、手軽に家族で来れたのに…」。県内の観光客は突然の知らせに残念がった。
壮大な滝の眺めや四季折々の山の風景が人気の国名勝地・袋田の滝。長引くコロナ禍の影響は、観光の町に大きく影を落とした。
「客足に波があり、利用客数が読みづらくなった。先々の経営を考えると厳しい。苦汁の決断」と経営者。町の高齢化がさらに進むことを考え、温浴スペースを活用しつつ、高齢者施設を新設し運営を始める。
■入場者数
袋田の滝の観瀑台に通じるトンネルの入場者数は、年々減少傾向だ。町観光商工課によると、ここ5年間は、2017年度が55万人、18年度が51万人だったが、コロナ禍の影響で入場閉鎖の時期もあり、19年度が41万人、20年度が31万人、21年度も32万人と落ち込んだ。1995年度がピークで107万人。地上180メートルから滝全体を見渡せる第2観瀑台がオープンした2008年度は87万7千人だったことを見ると、入場者数回復にさらなる魅力発信の施策が求められる。
町は、トンネル内の照明改修工事を今月1日から実施。一部区間の通行規制を行いながら、利用客はそのまま受け入れている。トンネル内の観光スポットの再整備とともに、照明演出による魅力の再構築を図る。
また、昨年度からまちづくり課に「タウンプロモーションチーム」を創設。交流サイト(SNS)などをフル活用し、情報発信強化やアウトドア事業創生に取り組む。同課は「フォロアー数が増え関心は高まっている。農林業の支援策なども示し、移住定住にもつなげたい」と話す。
■交通アクセス
3年前の東日本台風の大洪水で、県内唯一の観光やなが姿を消した。アユなど魚と直接触れ合える遊び場として人気だったが、やな場は流され、建物も水没。経営改革を行い、ここ数年黒字化した矢先だった。
やな組合は解散し、資産譲渡された町が建物を解体。土地は地権者に返還された。町幹部は「久慈川緊急治水対策プロジェクトで築堤などの進捗(しんちょく)状況に応じて、今後再建も検討していく」と話すにとどまる。
一方、交通アクセスや周遊の新たな試みも始めた。車の来町が大半だが、水郡線利用者らに対し、巡回バスの運行に加え、カーシェアリングやAIタクシーの活用も始め、サイクルステーション整備も進める。
観光客回復へ利用促進策が今後の鍵になる。