【茨城・大子町の課題 町長選に向けて】 (下) 《連載:茨城・大子町の課題 町長選に向けて》(下) 活性化 町民の要望どう反映
■役場跡地 防災と交流
「本屋や、話し合いながら勉強できる場所があったらいい」「特産品などを飲食できるスペースが欲しい」-。町役場跡地と隣接地に整備計画がある観光交流施設やイベント広場について、基本構想策定に向けて町民にアイデアを募るワークショップが、先月30日開かれた。地元の区長や高校生、町で働く若者ら18人が参加し、活発な声が次々上がった。
3年前の東日本台風(台風19号)による大水害で、町の様子は大きく変わった。久慈川と支流の合流地点近くに位置した町役場は浸水被害を受け、町中心部から1キロ離れた高台に移転した。防災機能と交流拠点を兼ねた跡地利用をはじめ、まちなかの活性化の仕掛けづくりが求められている。
■高台移転
人口約1万5千人で48.5%が65歳以上を占め、高齢化率は茨城県内一高い。中心部に住む車を乗らない高齢者、駅利用者からは、高台移転に伴い「役場が遠くなり、行きづらくなった」「選挙の期日前投票は役場だけなので、なかなか行けない」との声も聞かれる。
高齢者の交通手段確保が課題として、庁舎移転が決まっていた一昨年11月、町は日本郵便と連携協定を締結した。役場から遠方にある町内3郵便局で、納税証明書や住民票の写しの交付申請など公的証明書の行政事務手続きの一部を代行してもらう取り組みを開始。今年5月には町中心部の2郵便局も加え、高齢者らが高台の役場に出向く不便の解消に努める。
期日前投票所までの移動が困難な高齢者らには、タクシー往復料金を全額助成する支援も始めた。
一方で、役場移転後の周辺のにぎわいづくりも急務だ。町は昨年3月、国や県と連携して検討を進めてきた、町中心部の今後のまちづくり計画「まちなかビジョン」を策定。近くの道の駅「奥久慈だいご」が国交省の「防災道の駅」に選定され、今後解体される役場庁舎の跡地は、かさ上げし整備された上で「もう一つの防災道の駅」機能も有し、観光や交流の拠点づくりが進められる。
町民の意見を構想にどう反映させ、いくつもの要望をどう取りまとめるのか、町の手腕が問われる。
■常陸大子駅前
国交省の有識者検討会が7月、経営難の地方鉄道の存続策などを検討するよう促す提言を行った。JR東日本は2019年度の赤字額が、水郡線常陸大宮-常陸大子駅間で12億1千万円と県内最も多く、1日平均乗車数は830人、常陸大子-磐城塙間は152人と示した。
町とJRが開催する水郡線記念行事には、大勢の家族連れやファンが利用客として県内外から詰めかけ、活気を帯びた常陸大子駅。駅前の町中心部のにぎわいづくりは急務だ。