【統一地方選 水戸市の課題】 (下) 《連載:統一地方選 水戸市の課題》(下) 住宅需要増、人口は減 「選ばれるまち」危機感
■「選ばれるまち」危機感
JR水戸駅南口から歩いて3分ほどの一角に、高層マンション2棟の建設が進む。同駅北口では百貨店跡地に、再開発事業による20階建てが計画されるなど、県都の玄関口で、高層マンションの建設ラッシュが続く。
北口から延びる国道50号沿いは「馬の背大地」と呼ばれ、かつては商都のにぎわいを見せた。1999年に県庁が移転すると、空洞化が進んだ。
大型商業施設は郊外型へと切り替わり、中心市街地から飲食店や商店の灯は消えていった。ビルは取り壊され、代わりに目立つようになったのがマンションと駐車場だ。
■建設ラッシュに
「計画中も含めると、今後3年から4年の間に約700戸弱の新たなマンションの供給が見込まれる」
昨年9月の市議会で、市は中心市街地の住宅需要に触れ、定住人口の増加に期待を寄せた。
マンション建設は駅前ばかりではない。国道50号沿いの同市泉町、京成百貨店隣では19階建てマンションの建設が進む。
国道を挟んだ斜め向かいでは、新市民会館が7月の開館を待つ。同市南町にもマンション2棟が建設中で、中心市街地のあちこちでつち音が響く。
県庁の移転先、同市南部の笠原地区では、戸建て住宅の開発が続く。1983年の笠原小学区の人口は8千人台。40年たった今、1・5倍の1万2千人台に増え、世帯数も2600台から5200台と2倍に拡大した。
かつての田園風景は、戸建ての住宅団地に変貌。中でも子育て世代の流入が多く、児童数が増加。学校では教室が足りなくなり、笠原、吉沢の2校で校舎の増築工事が進む。
■いよいよ厳しく
市全体の人口は、旺盛な住宅需要とは裏腹に減少局面に入った。
2016年の27万1047人をピークに横ばいを続けてきたが、昨年4月には27万人を割り込み、今年3月現在の常住人口は26万8795人。1年前と比べて1300人近く減った。
出生・死亡に伴う自然動態は年間千人減で推移していたが、昨年から減少幅が広がり、それまで流入が多かった社会動態も市外への流出の方が多くなった。市幹部は「いよいよ厳しくなってきた」と危機感を募らせる。
「人口規模を維持できなければ、社会保障や経済、コミュニティーに影響が出かねない」。人口減少社会の波は、県内唯一の中核市も例外ではない。
市は23年度、中学校の給食無償化や小中新入生応援金など、子育て世帯への経済的負担軽減策を打ち出した。24年度以降、小学校給食費や0~2歳児保育料の無償化にも段階的に取り組む方針だ。
住みやすさを巡る都市間競争が激しさを増す中、各自治体は生活支援に力を注ぐ。「選ばれるまち」への取り組みが求められる。