【23年統一地方選 茨城町の課題】 (下) 《連載:23年統一地方選 茨城町の課題》(下)都市農村交流と涸沼活用
■関係人口づくり鍵
「すごい重い」「虫がいる」。昨年11月13日、茨城県茨城町駒場の畑で、東京都内から来た人たちが歓声を上げ土にまみれてサツマイモ掘りに挑戦した。2007年から始まった品川区の町内会「北品川一丁目町会」との交流会。大型バス1台でやって来た都民26人を、畑を管理する団体と町農業委員、町職員らが焼き芋を振る舞うなどしてもてなした。
同町内会はコロナ禍前まで茨城町への1日ツアーを開いてきた。メロン狩りや田植え、クリ拾い、タケノコ掘りなど季節ごとに旬の体験を盛り込んだ。この日は4年ぶりの開催だったが、子どもからお年寄りまで畑に入って掘り起こしたサツマイモを袋いっぱいに詰め、笑顔で帰っていった。
町農政課によると、都市農村交流が盛んになったのは10年代から。15年に広浦地区に発足した住民組織「ひろうら田舎暮らし体験推進協議会」を中心に、民泊や農業体験などを受け入れてきた。最近では「教育旅行」として、涸沼での漁業体験などに都内の私立幼稚園や中高校が訪れている。年間の受け入れ人数は千人を超えた。
■「半減」が確実視
町は急激な人口減少と超高齢化が予測されている。国立社会保障・人口問題研究所の18年推計によると、45年の町人口は2万1941人で、15年の3万2921人から1万980人(33・4%)減る見通し。今年1月の「二十歳のつどい式典」で人口減少による人手不足が話題に上がった。〝20歳成人〟が約350人出席したが、ここ最近の出生者数は140人台にまで減少。20年後の式典出席者が半減することが確実視されている。
人口減少の速度をいかに抑えるか。20年3月に町が策定した「第2期町まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、「新たな人の流れをつくるため、移住、定住、関係人口の創出・活躍にかかる支援施策を充実させる」とした。町は23年度、教育・子育て支援とともに、仕事などで町に関わる「関係人口」を移住、定住につなげる施策を打ち出した。
■もう一つの拠点
「涸沼の周辺をエリア分けして整備し、常に観光バスが来るような町にしたい」。町観光協会は涸沼を生かした観光に期待をかける。15年にラムサール条約湿地に登録された涸沼は関東唯一の汽水湖。スズガモなどの鳥類やヒヌマイトトンボに代表される昆虫類、魚介類も豊富だ。ヤマトシジミの産地で、資源を守ろうと、伝統漁法を維持し漁獲量を制限している。
涸沼周辺には湖畔の親沢、広浦の2公園のほか、涸沼自然公園がある。野鳥観察や環境学習の拠点「水鳥・湿地センター」も23年度中に供用開始する予定だ。同センターについて、同公園とともに「もう一つの観光拠点として関係人口づくりの要因になる」と町担当者。「町を知ってもらい、ファンをつくって、将来の移住、定住につなげたい」。都市農村交流と涸沼を生かした観光振興。まちの形を維持するために「関係人口」づくりが鍵を握っている。