【茨城・結城市の課題 市長選を前に】 (上) 《連載:茨城・結城市の課題 市長選を前に》(上) 人口減少 若い人の流出どう防ぐ
■子育て支援、新たな施策模索
任期満了に伴う茨城県結城市長選は30日告示、8月6日投開票で行われる。市長選を前に同市の課題を探った。
散歩する人や親子連れでにぎわう結城市新福寺のけやき公園。すぐ近くには2020年にJR結城駅北側から南側に移ってきた市役所庁舎、市外からも利用者が訪れる市民文化センター「アクロス」、国道50号バイパスがあり、同市の新しい中心市街地をつくっている。2歳の娘と公園を訪れた母親(42)は「バイパス沿いにはお店があり、庁舎も近くて便利」と笑顔で話した。
▼人気の地域
新福寺地区は市が市街化区域として整備を進めてきた。1985年に区画整理が始まり、2007年に完了した。公共施設が集約され、国道50号にも近く、現在は新しい住宅が多く立ち並ぶ。町内会長を務める男性(42)は「最近7、8軒家が建ったようだ。今建設中の家も6軒ほど見かける」と話した。男性には2人の子どもがおり、「小学校が近く、保育園も多い地域なので、子育て世帯に優しい」と受け止めている。
市内の不動産業者によると、同地区は庁舎東側の下り松地区と合わせて人気の地域だという。「どちらの地域も国道50号バイパスが近く移動に便利。バイパス沿いにはスーパーなどの商業施設も多く張り付いている」と説明した。
市幹部は「結城の人口動態の特徴は世帯数が増えていること」と話す。その理由に区画整理事業を挙げ「結城駅の南側と北西部でインフラ整備が進んだ。住環境が整ったことで、親元を離れた子ども世代が市外に流出せず、新しく家を建てている」と分析した。
▼隣市の影響
しかし、同市が公表している統計情報「統計ゆうき」によると、市の人口は1992年の5万3970人をピークに減少傾向にあり、その幅は徐々に大きくなってきている。2020年には減少率1%を超え、昨年は人口5万人を切った。
新福寺地区の別の男性(79)は「この地域に新しい家が増え始めたのは10年以上前。最近は落ち着いてきて、空き家が増えてきているように思う」と人口減少を実感している。
人口の流出については、隣接する栃木県小山市の影響が大きい。国が提供する地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」によると、21年の転出先で最も多かったのは小山市。転出超過の126人のうち、26人が同市だった。
両市は生活圏が重なるがゆえに、住民サービスの違いに敏感な市民も少なくない。4歳の娘を育てる女性(29)は「小山市のほうが子育て支援が充実しているからと、小山に引っ越した知人がいる。両市の保育園や学校、住民サービスを比較する母親は多いと思う」と話す。
今後の定住促進策について、市幹部は「財政面などを考慮すると、これまでのように区画整理事業を拡大するのは難しい」とみる。今後はハード面からソフト面の施策に移行し、「子育て支援や教育など、若い人の流出を止める新たな施策を模索する必要がある」と話した。