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【茨城・結城市の課題 市長選を前に】 (下) 《連載:茨城・結城市の課題 市長選を前に》(下)  企業誘致 大手の市内進出に期待

部品を検査する若手従業員=結城市新矢畑
部品を検査する若手従業員=結城市新矢畑


■「工場頼み」脱却も必要に

結城市の南部に広がる結城第一工業団地。その一角、新矢畑地区にある自動車部品製造、清水工業(東京)の結城工場では、部品を溶接する音が鳴り響いていた。作業場には20代の若者が目立つ。「従業員の平均年齢は31~32歳」と工場長は話す。工場が稼働した2013年と比べ、従業員数は約50人、10年間で倍以上に増えた。20代前半の地元の若者も多いという。

同工場で製造するのは、トラックのナンバープレート取り付け用部品、ステップなどの自動車部品。その多くは日野自動車の古河工場に送られる。

清水工業が立地したきっかけは2012年の日野の古河進出だった。「近くでお手伝いがしたいと思って決めた」と工場長は振り返る。同社はほかに東京都と山梨県にも工場を構えるが、工場長は「東京から古河へは1時間以上かかる。結城だと高速道路を使わずに30分ほどで行ける」と利点を語った。

▼大きな税収源

結城市は1970年代ごろから工業団地の造成を始め、区域を拡大しながら雇用創出や人口増加へとつなげてきた。現在は合わせて約200ヘクタールに約160社が立地する。清水工業の工場がある新矢畑地区は事業規模が最大で、市の大きな税収源だ。企業立地推進室の担当者は「新矢畑地区だけで年間約1億7千万円の税収がある」と話す。

市は現在、新たな工業団地の造成を進めている。面積は約22ヘクタール。来年度から分譲募集を始める予定だ。税収のさらなる増加だけでなく、若手雇用の受け皿としても期待が高まる。

市幹部によると、これまでは古河市の日野自動車、栃木県小山市の建機メーカー「コマツ」など、大手の工場が近隣市にある環境を生かし、企業誘致を進めてきた。現在立地する企業の多くはそれらの関連会社だ。同幹部は「さらなる発展のためには、今後は名の知れた大手企業の市内誘致が課題」と話した。

▼綱引き

結城市の近隣でも工業団地造成に意欲的な自治体は多い。企業誘致を巡って綱引きとなる可能性もある。市内にはインターチェンジ(IC)がなく、最も近い北関東自動車道桜川筑西ICまで約23キロ。一方、境町の境古河IC周辺地区など、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)沿線地域では、交通利便性を生かした工業用地の造成や分譲が進む。

コマツや富士通などの大手企業が既に立地する小山市でも、新たな工区を造成予定している。結城市の企業立地推進室の担当者は「第1希望は小山市で、結城市はその次という企業もあると思う」と懸念する。

ものづくり産業の構造変化も懸念材料だ。企画政策課の担当者は「今までは工業団地を造れば自然と雇用が生まれて人口が増えた。今後は仕事が機械化していく可能性がある」と危惧し、「若者を引き留めるためには、工場勤務以外の雇用も生み出す必要がある。そのために行政に何ができるか」と見据える。

これまで市の活性化に一役買ってきた工業団地。新たに造成される区域にどのような企業を誘致するか、動向が注目される。



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