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【茨城・牛久市の課題 市長選を前に】 (上) 《連載:茨城・牛久市の課題 市長選を前に》(上) 観光振興

市内外から観光客が訪れる牛久シャトー=牛久市中央
市内外から観光客が訪れる牛久シャトー=牛久市中央


■回遊性 いかに上げるか シャトーや大仏 「点」結ぶ手段が鍵

任期満了に伴う茨城県牛久市長選は9月3日告示、10日に投開票される。選挙を前に同市の課題を探った。

牛久市役所から西に住宅街を抜けると、木々に囲まれたレンガ造りの洋館や約5千平方メートルのブドウ畑を擁する日本遺産「牛久シャトー」が姿を現す。創業は1903(明治36)年。ブドウの栽培から醸造、瓶詰めまでを一貫して手がけ、日本のワイン産業の黎明(れいめい)期を支え、同市のシンボル的存在だ。業績悪化で飲食、物販事業が一時撤退する事態に追い込まれたが、現在はクラフトビールや限定生産のワインを販売するなど「復活」をアピールする。

東京都心から電車で約1時間という近さと自然に恵まれた環境をアピールしようと、市は地域資源を生かした「都市観光」「体験型観光」を掲げて誘客を図ってきた。中心となるのが牛久シャトーと牛久大仏だ。2021年に策定した「第2期牛久市まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、24年度までに観光入込客数62万人の達成を目標としている。

市は20年1月、シャトーの保存と活用に向けて第三セクター「牛久シャトー株式会社」(川口孝太郎社長)を設立。同社はレストランなどの営業や、ワインとクラフトビールの醸造を再開した。酒類の売り上げについて担当者は「順調に伸びてきている」と手応えを口にする。限定生産のワインを目当てに県外から訪れる愛飲家もいるという。新型コロナウイルス感染が落ち着きを見せる中で「シャトーが起爆剤となって、周りのエリア全体が元気になってくれればいい」(担当者)と意欲を見せる。

牛久シャトーと並び、市を象徴する観光地の一つが牛久大仏。足元には極楽浄土をイメージした庭園が広がり、地上85メートルからの展望や御朱印集めなどで知名度が高く、多くの外国人を含む観光客が足を運ぶ。7月からはふるさと納税の新たな返礼品として、高さ120メートルの大仏の「螺髪(らほつ)」を磨く特別体験ツアーの提供も開始。さらなる認知度向上に期待がかかる。

「全国に誇れる素材はある」(市幹部)一方、いかに市内の回遊性を上げるかが課題となっている。千葉県船橋市から牛久大仏を訪れた40代女性は「(牛久と言えば)ここしか思い浮かばなかった。牛久駅までの帰りのタクシーも予約済み」と話す。市中心部の牛久シャトー、東の牛久大仏、西の住井すゑ文学館-。公共交通機関を乗り継いで、全てに立ち寄るのは容易ではない。

市幹部は「観光地が点になってしまっている。線として結ぶ手だてが欲しい」と指摘する。牛久大仏は首都圏中央連絡自動車道(圏央道)阿見東インターチェンジ(IC)から車で約3分の立地。ICに隣接する茨城県阿見町のあみプレミアム・アウトレットなどに客足が流れる可能性もある。同幹部は、市内の観光ポイントを結ぶ手段としてコミュニティバスにも触れつつ「自家用車の利用者など、ターゲットの絞り込みも模索すべきかもしれない」と語った。



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