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【茨城・牛久市の課題 市長選を前に】 (下) 《連載:茨城・牛久市の課題 市長選を前に》(下) 駅前ビル

JR牛久駅西口の「エスカード牛久」。左は住居棟=牛久市牛久町
JR牛久駅西口の「エスカード牛久」。左は住居棟=牛久市牛久町


■街の活気どう取り戻す 空きスペース 店舗や公共施設模索

JR牛久駅西口から歩行者デッキで直結する商業ビル「エスカード牛久」。1987年に関西の総合スーパー「イズミヤ」が関東進出1号店として開店し、1階から4階まで展開。衣料、食品など幅広く取り扱っていたが、2017年に撤退した。それ以来、茨城県牛久市の中心市街地の「顔」とも言える同ビルに、かつてのにぎわいを取り戻そうと懸命の努力が続く。

牛久市は同ビルを活性化させようと、4階に公共施設の整備計画を打ち出した。19年度からは基本構想・基本計画の策定に取り組んだ。美術品の展示室や学習室、会議室を設け、年間計16万2400人の利用者を見込んだ。しかし、新型コロナウイルス感染が収まらない中、事業の必要性や予算規模に市議会から反対論が噴出。21年度一般会計当初予算案から改修費約4億円を削除する修正案が提出され、賛成多数で可決された。

市に計画の見直しを迫った市議会は21年4月、再整備の方向性を話し合う特別委員会を設置。「議会として責任を持って具体的な姿勢を示す」として、会合は23年3月までに19回開かれ、同ビルのあり方について報告書をまとめた。市役所庁舎の狭あい化解消や災害時のリスク回避を念頭に、窓口業務などの機能を持たせる「マチナカ市役所」や、市民が憩う場の「マチナカリビング」の配置を唱えているが、市としての結論はまだ出ていない。

同ビルに関するもう一つの課題は、フロアの所有権だった。公共施設整備が予定されていた4階(2851平方メートル)は、市を含む地権者40人の共有となっていた。この状況を打開するため、21年2月、市が所有する1階(2324平方メートル)との交換に乗り出した。地権者の合意を取り付け、今年10月ごろに交渉を終える見通しとなっている。

現在、1~2階でスーパーマーケットや飲食店、日用品店などが営業し、多くの買い物客でにぎわう。一方で3~4階はフィットネスクラブと市生涯学習センターを除き、約半分のスペースが埋まっていない。1階のスーパーで買い物を終えたつくば市の60代女性は「以前は家電も扱っていて便利だった。バスの乗り降りも大変なので、これからは自宅近くに開店するドラッグストアで済ませるかも」と話した。

コロナ禍を経て社会経済活動が正常化しつつある中、22年5月には衣料品店「ファッションプラザ・パシオス」や100円ショップ「ダイソー」が開店した。にぎわいは一定の回復を見せているものの、専門店への来店数は22年度17万人で、前年度比9割にとどまる。同ビルを管理する第三セクターの牛久都市開発は「今後も厳しい収支状況が見込まれるが、創意工夫し経常損失の縮減に努める」としている。

食料や日用品を買いに訪れた市民からは「入居希望がなければ、どうしようもない」「他の所に買い物に行く」など半ば諦めの声が上がる。中心市街地の魅力を上げるため、公共施設の整備やテナント誘致に期待がかかる。



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